第6章 公安の維持と災害対策

第4節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

① 自然災害の発生状況(注)

令和元年(2019年)中は、地震、大雨、台風等により、死者・行方不明者141人、負傷者1,354人等の被害が発生した。平成27年(2015年)から令和元年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表6-9のとおりである。

注:数値は、いずれも令和2年4月末現在のもの

 
図表6-9 自然災害による主な被害状況の推移(平成27~令和元年)
図表6-9 自然災害による主な被害状況の推移(平成27~令和元年)
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令和元年中は、29個の台風が発生し、うち5個が日本に上陸した。

② 山形県沖を震源とする地震(注)

令和元年6月18日午後10時22分、山形県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生し、新潟県村上市で震度6強を観測した。この地震により交通障害等の被害が発生した。

新潟県警察及び山形県警察をはじめとする関係県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、交通対策等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和元年7月31日現在のもの

 
行方不明者の捜索活動(山形)
行方不明者の捜索活動(山形)
③ 令和元年8月の前線に伴う大雨(注)

令和元年8月26日から同月29日にかけて、前線の影響により、九州北部地方を中心に記録的な大雨となり、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生した。

特に、増水した河川に流されるなどして、死者4人等の被害が発生した。

佐賀県警察及び福岡県警察をはじめとする関係県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、交通対策等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和元年9月24日現在のもの

④ 令和元年房総半島台風(台風第15号)(注)

令和元年9月7日から同月9日にかけて、令和元年房総半島台風の影響により、関東地方を中心とした各地で暴風を伴った大雨となった。この暴風等により、千葉県等において多数の電柱の倒壊や損傷等による長期間にわたる大規模な停電が発生した。

また、強風にあおられるなどして死者1人等の被害が発生した。

千葉県警察をはじめとする関係都県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、交通対策、被災地域の警戒警ら等の活動を実施した。

注:台風第15号は「令和元年房総半島台風」と名称が定められた(令和2年2月19日気象庁報道発表)。数値は、いずれも令和元年10月7日現在のもの

 
避難所における相談活動(千葉)
避難所における相談活動(千葉)
⑤ 令和元年東日本台風(台風第19号)(注)

令和元年10月10日から同月13日にかけて、令和元年東日本台風の影響により、関東地方、東北地方等の各地で暴風を伴った大雨となった。この大雨等により、広い範囲で河川の氾濫が相次いだほか、浸水害、土砂災害等が発生した。

特に、大雨により生じた土砂崩れに巻き込まれるなどして、関東地方及び東北地方を中心に死者84人、行方不明者3人等の被害が発生した。

警察では、2管区34都道府県警察から広域緊急援助隊等の警察災害派遣隊延べ約4,400人及び17都道府県警察から警察用航空機(ヘリコプター)延べ119機を宮城県警察、福島県警察、長野県警察等に派遣し、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、交通対策、被災地域の警戒警ら、情報通信対策、被災地における各種犯罪への対策等の活動を実施した。

注:台風第19号は「令和元年東日本台風」と名称が定められた(令和2年2月19日気象庁報道発表)。数値は、いずれも令和2年4月10日現在のもの

⑥ 低気圧等による大雨(注)

令和元年10月24日から同月26日にかけて、低気圧等の影響により、関東地方から東北地方の太平洋側を中心に各地で大雨となった。これにより、河川の氾濫、浸水害及び土砂災害等が発生した。

特に、大雨により生じた土砂崩れに巻き込まれるなどして、死者13人等の被害が発生した。

千葉県警察及び福島県警察をはじめとする関係都県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、交通対策等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和元年11月6日現在のもの

 
ボートによる行方不明者の捜索活動(福島)
ボートによる行方不明者の捜索活動(福島)

(2)大規模災害への備え

① 危機管理体制の構築

警察では、東日本大震災をはじめとした大規模災害における反省、教訓を踏まえ、災害に関する危機管理体制を構築するため、組織横断的な取組を行っている。

各都道府県警察においては、災害対処能力の向上や初動態勢の確立のための取組を計画的に進めているほか、南海トラフ地震、首都直下地震等の被害想定や局地的な豪雨による土砂災害等最近における災害の特徴を踏まえつつ、各都道府県の地理的特性に応じた災害対策を推進している。

また、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練等を実施しているほか、各種装備資機材の整備を進めている。

 
広域緊急援助隊合同訓練(富山)
広域緊急援助隊合同訓練(富山)
② 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震及び首都直下地震はもとより、その他のいかなる大規模災害にも的確に対処できるよう、従前の取組内容を不断に見直し、平素の業務における災害に関する危機管理体制の点検及び構築を持続的に推進するとともに、災害警備に資する先端技術を積極的に取り入れ、一層の災害対処能力の向上を目指していくこととしている。



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