第3章 サイバー空間の安全の確保

5 国際連携の推進

(1)国際捜査共助

国境を越えて行われるサイバー犯罪・サイバー攻撃について、国内における捜査で犯人を特定できない場合は、外国捜査機関の協力を求める必要がある。

警察庁では、サイバー犯罪に関する条約(注1)、刑事共助条約(協定)(注2)、ICPO、サイバー犯罪に関する24時間コンタクトポイント(注3)等の国際捜査共助の枠組みを活用し、国境を越えて行われるサイバー犯罪・サイバー攻撃に対処している。

注1:サイバー犯罪から社会を保護することを目的として、コンピュータ・システムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全等に係る刑事手続の整備、犯罪人引渡し等に関する国際協力等につき規定している。平成24年に我が国について発効した。

注2:205頁参照

注3:平成9年(1997年)12月のG8司法内務閣僚会合で策定された「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」等に基づき設置されたもので、平成31年2月現在、86の国・地域に設置されている。

(2)外国捜査機関等との連携の推進

警察庁では、多国間における情報交換や協力関係の確立等に積極的に取り組んでおり、令和元年中は、G7ローマ/リヨン・グループ(注1)に置かれたハイテク犯罪サブグループ、ICPO及びEUROPOL(注2)が共催するサイバー犯罪会議等の国際会議に参加した。また、FBI(注3)による米国内外の捜査機関等の職員を対象としたサイバー犯罪対策等に関する研修や、ICPO等が主催するワークショップに我が国の警察職員を派遣するなど、サイバー空間の脅威に関する情報の共有や、国際捜査共助に関する連携強化等を推進している。

さらに、情報技術解析に関する知識・経験等の共有を図るため、ICPO加盟国の法執行機関に加えて、国外の民間企業や学術機関が参加するICPOデジタルフォレンジック専門家会合に平成28年から参加しているほか、情報セキュリティ事案に対処する組織の国際的な枠組みであるFIRST(注4)に平成17年から加盟しており、組織間の情報共有を通じ、適切な事案対処に資する技術情報の収集を行っている。

注1:昭和53年(1978年)にボン・サミットを契機に発足したG8テロ専門家会合(G8ローマ・グループ)と平成7年(1995年)にハリファクス・サミットで設置されたG8国際組織犯罪対策上級専門家会合(G8リヨン・グループ)が、平成13年(2001年)の米国における同時多発テロ事件以降合同で開催されているもので、国際組織犯罪対策やテロ対策等について検討している。なお、平成26年(2014年)3月より、G7として実施している。

注2:European Union Agency for Law Enforcement Cooperationの略。欧州連合(EU)の法執行機関であるが、捜査権限はなく、加盟国間の情報交換の促進や収集した情報の分析等が主な任務である。

注3:Federal Bureau of Investigation(米国司法省連邦捜査局)の略

注4:Forum of Incident Response and Security Teamsの略

 
ハイテク犯罪サブグループ
ハイテク犯罪サブグループ

(3)国際協力の推進

警察庁では、サイバー空間の脅威への諸外国の対処能力の向上を図るとともに、外国捜査機関等との協力関係を強化することを目的として、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携して外国捜査機関等に関する支援を行っている。平成26年度からは、外国捜査機関等のサイバー犯罪対策等に従事する職員を招へいし、サイバー空間の脅威への対処に関する知識・技術を習得させることなどを目的とした研修を実施しているほか、平成29年度からは、ベトナム公安省の職員を受け入れて、サイバーセキュリティ対策等に関する知識・技術の習得を目的とした研修を行っている。



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