第3章 サイバー空間の安全の確保

第2節 サイバー空間の脅威への対処

1 総合的なサイバーセキュリティ対策の強化

(1)警察におけるサイバー空間の脅威への対処体制

サイバー空間の脅威への対処は警察のいずれの部門にとっても大きな課題となっており、統一的な戦略の下で警察全体の対処能力を強化する必要があることから、警察庁では、サイバーセキュリティ対策全般の司令塔としての機能を強化するため、サイバーセキュリティの確保に向けた各種取組の総括・調整を行う審議官が、

・ サイバーセキュリティ戦略の策定

・ サイバー空間の情勢の総合的な分析

・ サイバー空間の脅威への総合的な対処方針の策定

・ 部門横断的な捜査支援・技術支援の調整

・ 捜査員等の人材育成に関する指針の立案

・ 装備資機材の効果的な整備・活用の調整

・ 民間事業者、外国機関等との連絡の総括

といった取組を推進している。

 
図表3-3 警察におけるサイバー空間の脅威への対処体制
図表3-3 警察におけるサイバー空間の脅威への対処体制

(2)警察におけるサイバーセキュリティ戦略

社会情勢等の変化に的確に対応しつつ、サイバー空間の脅威に先制的かつ能動的に対処するため、警察では、平成27年に制定された「警察におけるサイバーセキュリティ戦略」に基づき、サイバー空間の脅威への対処に係る組織基盤を強化するなど、警察組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進している。

 
図表3-4 警察におけるサイバーセキュリティ戦略の概要
図表3-4 警察におけるサイバーセキュリティ戦略の概要

(3)サイバー空間の脅威への対処に係る組織基盤の強化

① サイバー空間の脅威への対処に係る人材の確保・育成

警察では、サイバー空間の脅威への対処に係る人的基盤を強化するため、平成27年に策定した「サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針」に基づき、職員の採用・登用、教育・研修、キャリアパスの管理等を部門横断的かつ体系的に実施している。また、28年に「警察庁サイバー人材確保・育成計画」を策定し、サイバー空間の脅威への対処に係る人材の裾野の拡大及び能力の向上を図ることとしている。

さらに、警察庁では、各都道府県警察の捜査員等を対象に、サイバー空間の脅威への対処に関する知識・技能を競うサイバーセキュリティコンテストを開催している。同コンテストでは、実際の事案を想定したシナリオを使用し、捜査員等の知識・技能の向上を図っているほか、全国の優秀な人材の発掘に取り組んでいる。

 
図表3-5 サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成
図表3-5 サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成
 
サイバーセキュリティコンテストの状況
サイバーセキュリティコンテストの状況
② サイバーセキュリティ対策研究・研修センターの取組

警察大学校に設置されているサイバーセキュリティ対策研究・研修センターは、解析研究室と捜査研修室の2室で構成され、両室は相互に連携しつつ、以下の取組を実施している。

ア 犯罪の取締りのための情報技術の解析に関する研究

解析研究室においては、サイバー犯罪等に悪用され得る最先端の情報通信技術に関する研究及び各種電子機器等の解析手法の確立に向けた研究を行うとともに、研究成果を全国の情報技術解析部門に展開している。

イ 警察全体の対処能力向上に必要な研修

捜査研修室においては、解析研究室で得られた成果を活用しつつ、各都道府県警察においてサイバー犯罪対策やサイバー攻撃対策に専従する捜査員をはじめとする全部門の捜査員を対象に、実際の事案を想定した高度かつ実践的な研修を行っている。

 
図表3-6 サイバーセキュリティ対策研究・研修センター
図表3-6 サイバーセキュリティ対策研究・研修センター


前の項目に戻る     次の項目に進む