5 犯罪被害者支援
(1)警察による犯罪被害者支援
① 基本施策
犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では図表6-15のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

② 犯罪被害給付制度
犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者等に対し、犯罪被害者支援法(注)に基づき、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年1月に開始して以来、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。


③ 被害者の特性に応じた施策
犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。
注2:102頁参照
注3:54、55、102頁参照
注4:111頁参照

④ 関係機関・団体との連携
犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県で、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等の関係機関・団体から構成される「被害者支援連絡協議会」が設立されている。
また、よりきめ細かな犯罪被害者支援を行うため、全国被害者支援ネットワークに加盟する民間の被害者支援団体が設立されているほか、全ての都道府県において、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体(注)として指定している。同団体では、犯罪被害者等の支援に関する広報・啓発活動、犯罪被害等に関する相談への対応、犯罪被害者等給付金の裁定の申請の補助及び物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法による犯罪被害者等の援助を行っている。
コラム 国外犯罪被害弔慰金等支給制度について
平成28年11月30日に国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律が施行され、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により、死亡した日本国籍を有する者(日本国外の永住者を除く。以下同じ。)の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり200万円が、障害等級第1級相当の障害が残った日本国籍を有する者に国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり100万円が、それぞれ支給されることとなった。
当該支給の裁定は、都道府県公安委員会が行うこととされている。
(2)第3次犯罪被害者等基本計画の推進
犯罪被害者等基本法において、政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画を定めなければならないこととされている。
これに基づき、平成17年には犯罪被害者等基本計画が、23年には第2次犯罪被害者等基本計画がそれぞれ策定されていたところ、28年4月、それまでの基本計画の推進による成果を踏まえつつ、28年度から32年度までの5年間を計画期間とする第3次犯罪被害者等基本計画が策定された。
犯罪被害者等基本計画の作成及び推進に関する事務を担う警察庁では、関係府省庁が推進する具体的施策について、その進捗状況を定期的に確認するとともに、年次報告等を通じて公表するなど、第3次犯罪被害者等基本計画の確実な推進を図っている。
