3 警察の情報通信
(1)警察活動を支える警察情報通信
警察では、事件、事故又は災害がどこでどのように発生しても対応できるよう、各種の情報通信システムを開発し、それらを全国に整備するとともに、システムの高度化に努めている。
具体的には、独自に整備・維持管理している無線多重回線、電気通信事業者の専用回線、衛星通信回線等により構成される全国的なネットワークにより、警察庁、管区警察局、警察本部、警察署、交番等を結ぶほか、車載通信系(警察本部を中心に警察署、パトカー、警察用航空機等を結ぶ無線通信系)、署活系(警察署を中心に所属する警察官を結ぶ無線通信系)、携帯通信系(機動隊による部隊活動等、局所的な警察活動での無線通信系)といった各種の移動通信システムを構築することにより、警察業務を遂行する上で不可欠な情報の伝達を実現している。
また、指名手配被疑者、行方不明者、盗難車両等に関する情報を警察庁に登録することにより、第一線の警察官からの照会に即時に回答したり、運転免許証に関する情報を全国一元管理することにより、運転免許証の即日交付を実施したりするための警察情報管理システムを全国に構築することで、第一線の警察活動を支えるとともに、迅速な警察行政に貢献している。
これら警察情報通信の円滑な運営を図るため、国の機関である全国の情報通信部(注)に、情報通信に関する専門的な技術を有した職員を配置している。

(2)機動警察通信隊の活動
全国の情報通信部には機動警察通信隊が設置されており、現場の警察活動の基盤となる通信を確保等するための様々な活動を行っている。具体的には、警衛・警護警備の実施時や事件、事故又は災害発生時に、警察本部と現場警察官との間の指揮命令や連絡等が円滑に行われるよう、無線の不感地帯対策のほか現場映像の伝送等の各種情報通信対策を講じている。
平成28年においては、4月の熊本地震、5月の伊勢志摩サミット及びオバマ・米国大統領(当時)の広島訪問に伴う警護警備、8月の台風第10号による被害、11月の福岡市における博多駅前道路陥没事故等の際に出動した。

道路陥没事故の現場から伝送された映像
コラム 災害現場で活躍する機動警察通信隊
平成28年熊本地震において、熊本県、福岡県、大分県、宮崎県を始めとする各県情報通信部並びに九州及び近畿管区警察局情報通信部の機動警察通信隊は、発災直後から災害現場に出動した。機動警察通信隊は、現場の状況把握や広域緊急援助隊等の指揮のために、デジタル映像モバイル伝送システム、応急通信対策車(注)等を活用して、倒壊した家屋や損壊した道路の現場状況、広域緊急援助隊による捜索救助活動の状況等の映像をリアルタイムで警察本部、警察庁、首相官邸等に伝送した。

捜索現場から伝送された映像

捜索状況の撮影
(3)情報管理の徹底
警察では多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(注1)の策定・改正等により、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を進め、厳格な情報管理に努めている。具体的には、警察内部ネットワークの外部ネットワークからの分離、外部記録媒体の利用制限等の情報流出等を防ぐための技術的環境を整備するとともに、警察職員の情報の取扱いに係る規範意識の向上のための取組を推進している。
また、警察庁及び全都道府県警察にCSIRT(シーサート)(注2)を設置し、警察情報管理システム等において情報セキュリティインシデント(注3)が発生した場合に、迅速かつ的確な情報の集約・分析、被害拡大を防止するための措置等を実施することとしている。さらに、これらの取組の実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした情報管理業務監査及び情報セキュリティ監査を継続的に実施している。
注2:Computer Security Incident Response Team の略
注3:不正プログラム感染事案等情報セキュリティの維持を困難とする事案