5 良好な生活環境の保持
(1)風俗営業等の状況
① 風俗営業の状況
警察では、風営適正化法(注)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者等の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。

② 性風俗関連特殊営業の状況
性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、無店舗型性風俗特殊営業や映像送信型性風俗特殊営業の届出数が増加している一方で、店舗型性風俗特殊営業及び電話異性紹介営業の届出数は減少している。

③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況
深夜酒類提供飲食店の営業所数は、近年減少傾向にある。

④ 特定遊興飲食店営業の状況
平成28年6月に風営適正化法の一部を改正する法律が全面施行されたことにより、深夜に客に遊興と飲酒をさせる特定遊興飲食店営業が、営業所設置許容地域において許可制の下で営業可能になった。28年中に許可を受けた特定遊興飲食店営業の営業所数は、208軒であった。
(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
① 売春事犯
平成28年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員等(注1)の割合は17.8%(79人)と、売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
最近では、スカウト組織から路上で勧誘した女性の紹介を受けて売春をさせる事犯や、女性をマンションの一室に居住させ、出会い系サイト(注2)等を通じて募った不特定多数の男性客を相手に売春をさせる事犯がみられる。
注2:138頁参照

事例
無職の男(58)らは、28年5月、18歳に満たない児童であることを知りながら、家出中の少女らをマンションの一室に居住させ、ホテル等において、出会い系サイト等を通じて募った不特定多数の男性客を相手に売春をさせた。同年7月までに、同男ら4人を売春防止法違反(周旋)等で逮捕した(大阪)。
② 風俗関係事犯
風営適正化法による検挙状況は、近年減少傾向にある。
また、わいせつ事犯の検挙状況は、最近4年間減少している。わいせつ事犯に関しては、近年、海外サーバを経由してわいせつな動画を頒布する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯が多くみられる。
このほか、賭博事犯に関しては、いわゆるインターネットカジノを利用した事犯がみられるほか、最近では、会員制を採り、常連客以外の客を排除したり、喫茶店を装ったりするなど警察の取締りから逃れるための対策が巧妙化している。


事例
インターネットカジノ店経営者の男(68)らは、28年2月頃から7月にかけて、不特定多数の客に対し、同店に設置したパーソナルコンピュータ等を使用して、インターネットを利用したゲーム等による賭博をさせていた。同月、同男ら4人を常習賭博罪で、客を単純賭博罪で逮捕した(和歌山)。
(3)人身取引事犯対策
警察では、平成26年12月に政府が策定した「人身取引対策行動計画2014」等に基づき、法務省入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な経営者、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っているほか、被害者の早期保護のため、警察等に被害申告するように多言語で呼び掛けるリーフレットを作成し、関係機関・団体等に配布するとともに、被害者の目に触れやすい場所に備え付けるなどの取組を行っている。
28年中の人身取引事犯の検挙人員は46人で、このうち風俗店等関係者が16人、仲介業者が5人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は46人で、その国籍の内訳は、日本(25人)、タイ(8人)、カンボジア(7人)、フィリピン(5人)及びベトナム(1人)であり、日本人の被害者数が過去最多となった。


事例
人身売買ブローカーの女(35)は、28年6月から7月にかけて、「日本に無料で観光旅行に行ける」などと勧誘してタイ人女性を来日させ、高額な借金を負わせた上、その返済のために売春を強要した。同月、同女を入管法(注)違反(不法就労あっせん)で逮捕した(警視庁)。
コラム いわゆるアダルトビデオ出演強要問題への対策
近年、詐欺・脅迫的な言動を用いられて、いわゆるアダルトビデオへの出演を強要されたり、出演を拒否した際に多額の違約金を請求されるなどして、アダルトビデオへの出演を余儀なくされたりする事案についての相談が警察に寄せられている。本人の意思に反してアダルトビデオへの出演を強いるなどの行為は、精神的・肉体的苦痛をもたらす深刻な人権侵害であり、政府においては、平成29年3月、アダルトビデオ出演強要問題について、必要な対策を緊急かつ集中的に実施することを関係府省対策会議で決定するなど、同問題に対し、政府一体となって対策を推進している。
警察では、各種法令を適用した厳正な取締り、スカウトに対する街頭での指導・警告、各種広報媒体を活用した被害防止対策、相談窓口の周知活動、警視庁及び道府県警察本部並びに各警察署の担当者に対する研修等を実施している。
また、各都道府県警察で指定されたアダルトビデオ出演強要問題専門官が、管内の同問題に関する情報の集約等、同問題に適切に対応するための様々な業務を行っている。
(4)銃砲刀剣類の適正管理と危険物対策
① 銃砲刀剣類の適正管理
平成28年末現在、銃刀法(注)に基づき、都道府県公安委員会から9万6,232人が、19万5,446丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。28年中、申請を不許可等とした件数は36件、所持許可を取り消した件数は56件であった。また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行う一方、危害予防上支障のない範囲で猟銃等の所持許可に伴う申請者の負担軽減を図るための措置を講じている。
警察では、銃刀法を厳正に運用し、銃砲刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。



② 危険物対策
火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。
警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

(5)環境事犯対策
① 廃棄物事犯(注)
平成28年中の廃棄物事犯の検挙事件数の約半数を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。
警察では、引き続き環境行政部局との人的な交流や情報交換を行うなどし、早期発見・早期検挙に努めている。

② 動物・鳥獣関係事犯(注)
28年中の動物・鳥獣関係事犯の検挙事件数の約半数を、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反が占めている。また、犬、猫等を殺傷するなど、動物の愛護及び管理に関する法律違反も引き続き検挙されている。

(6)探偵業の状況
平成28年中の探偵業法(注1)での検挙件数は5件、行政処分件数は57件(営業停止命令4件、指示処分53件)であった。警察では、探偵業法に基づき、探偵業者(注2)の業務実態を把握し、違法行為に対しては厳正に対処するとともに、業界の全国組織である一般社団法人日本調査業協会や認可法人全国調査業協同組合等との連携の下、研修会等を通じて、探偵業務の運営の適正化を図っている。
注2:届出のなされている探偵業者数は5,691(28年末現在)