トピックス

トピックスIV 特殊詐欺の撲滅に向けた警察の取組

(1)特殊詐欺の現状

振り込め詐欺(オレオレ詐欺(注1)、架空請求詐欺(注2)、融資保証金詐欺(注3)及び還付金等詐欺(注4))を始めとする特殊詐欺(注5)の認知件数・被害総額の推移は、図表IV-1のとおりである。平成27年中の特殊詐欺全体の認知件数は前年より増加したが、被害総額は減少した。

交付形態別の認知件数(既遂)については、被害者が現金を指定された預貯金口座に振り込む「振込型」及び自宅等に受け取りにきた犯人に直接手渡す「現金・キャッシュカード手交型」は前年より増加したが、宅配便等で送付する「現金送付型」は減少した。

特殊詐欺の被害者の77.0%を65歳以上の高齢者が占め、特にオレオレ詐欺、還付金等詐欺及び金融商品等取引名目の特殊詐欺においてその割合が高かった。

また、27年中の検挙件数は4,112件、検挙人員は2,506人といずれも前年より増加し、23年以降で最多となった。

注1:親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補填金等の様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
注2:架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
注3:融資を受けるための保証金の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
注4:市区町村の職員等を装い、医療費の還付等に必要な手続を装って現金自動預払機(ATM)を操作させて口座間送金により振り込ませる手口による電子計算機使用詐欺
注5:被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝を含む。)の総称であり、振り込め詐欺のほか、金融商品等取引名目、ギャンブル必勝法情報提供名目、異性との交際あっせん名目等の詐欺がある。
 
図表IV-1 特殊詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成18~27年)
図表IV-1 特殊詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成18~27年)
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(2)取締りの推進

① 都道府県警察における取締り

特殊詐欺は、犯行グループのリーダーや中核メンバーを中心として、電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」、被害者の自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」等が役割を分担し、組織的に敢行されている。

警察では、高齢者を標的とした特殊詐欺に重点を置くなど、手口・被害実態を分析し、これを踏まえながら、犯行拠点の摘発やだまされた振り作戦(注)の実施等により、犯行グループの検挙の徹底を図っている。

また、架空・他人名義の預貯金口座や携帯電話等が特殊詐欺に利用されていることから、これらの流通を遮断し、犯行グループの手に渡らないようにするため、預貯金口座の売買等の特殊詐欺を助長する行為の取締りを推進している。

注:特殊詐欺の電話等を受け、特殊詐欺であると見破った場合に、だまされた振りをしつつ、犯人に現金等を手渡しする約束をした上で警察へ通報してもらい、自宅等の約束した場所に現れた犯人を検挙する、国民の積極的かつ自発的な協力に基づく検挙手法
 
図表IV-2 特殊詐欺の検挙状況の推移(平成18~27年)
図表IV-2 特殊詐欺の検挙状況の推移(平成18~27年)
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② 組織的に敢行される特殊詐欺への対策

平成27年中の特殊詐欺の検挙人員のうち、暴力団構成員等の数は826人と、特殊詐欺の検挙人員全体の33.0%を占めており、特殊詐欺が暴力団の資金源となっている状況がうかがわれる。警察では、詐欺事件の捜査を担当する知能犯捜査部門と暴力団犯罪等の捜査を担当する組織犯罪対策部門の連携強化等により、「受け子」等から得られた供述等を端緒とする上位者への突き上げ捜査に加え、犯行グループの組織実態等に関する徹底した情報の収集・集約・分析により、犯行グループの中枢の検挙及び犯行拠点の摘発を図るなど、組織犯罪対策の手法を活用した取締りを推進している。

28年4月には、特殊詐欺の犯行グループに関する情報収集等を強化するため、特殊詐欺対策のための地方警察官約160人の増員が行われた。

(3)官民一体となった予防活動の推進

① 広報啓発活動

警察では、様々な機会を通じて、犯行の手口や被害に遭わないための注意点等の情報を積極的に発信しており、特に被害者の多くを占める高齢者に対しては、諸方面から注意喚起がなされるよう広報啓発活動を推進している。

 
埼玉県警察による街頭キャンペーンの状況
埼玉県警察による街頭キャンペーンの状況
② 関係機関・団体等との連携

特殊詐欺の被害金の多くが金融機関の窓口やATMを利用して出金又は送金されていることから、金融機関職員等による顧客への声掛けは、被害防止のために極めて重要である。警察では、声掛けをする際に顧客に示すチェックリストの提供、金融機関等の職員と協働で行う訓練等により、声掛けを促進している。また、郵便・宅配事業者やコンビニエンスストアに対しては、被害金が入っていると疑われる荷物の発見・通報を依頼するなどして連携を強化している。こうした官民一体となった予防活動により、平成27年中、1万2,332件、約267.0億円の被害を未然に防止した。

また、賃貸マンションの空き室等が被害金の送付先や犯行の拠点として悪用されている状況を踏まえ、不動産関係団体等に対し、空き室の管理の徹底のほか、建物を特殊詐欺の用に供しない旨の確約書等の使用を呼び掛けるなどの対策も推進している。

さらに、自治体と連携して、電話機の呼出し音が鳴る前に犯人に対し犯罪被害防止のために通話内容が自動で録音される旨の警告アナウンスを流し、犯人からの電話を自動で録音する機器を高齢者宅に普及させることにより、特殊詐欺の被害防止を図っている。

コラム コールセンターを利用した特殊詐欺被害防止

警察では、民間委託したコールセンターからの電話連絡を通じて、捜査の過程で押収した名簿の登載者を中心に、高齢者への注意喚起を図っており、これにより被害を未然に防いだ事案が多数ある。

例えば、長崎県警察では、高校の卒業生名簿を悪用したと疑われるオレオレ詐欺を認知したことから、当該名簿を入手し、名簿に記載された卒業生の実家に対してコールセンターの職員が注意喚起を行ったところ、同様のオレオレ詐欺と思われる電話を受けていた80歳代の女性のオレオレ詐欺による被害を未然に防止した。



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