第6章 公安の維持と災害対策

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出等の取締り

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっている情勢を踏まえ、これまでに、我が国や各国が主催したPSI(注)阻止訓練に都道府県警察のNBCテロ対応専門部隊等を派遣しており、27年11月には、ニュージーランドが主催した訓練「MARU2015」に参加するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、105か国(平成27年12月末日現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。

(2)技術情報等の流出防止

我が国の技術情報とそれにより生産される製品の中には、使用方法によっては軍事用途に転用可能なものも多く含まれる。警察では、産学官の連携等による技術情報等の流出防止に向けた取組を行っているほか、平成27年12月までに、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を33件検挙しており、過去には、軍用の化学兵器の製造や核・ミサイルの開発に用いられるおそれがある物資の不正輸出事件等を検挙している。これらの事件においては、第三国を経由した迂回輸出の実態や摘発逃れを目的とした輸出名義人の偽装が確認されるなど、犯罪の手口が悪質・巧妙化しており、警察では、国内外の関係機関との緊密な連携等を通じて、違法行為に対する取締りを更に徹底することとしている。

事例

貿易会社役員(75)らは、武器及び大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いものとして、外為法で輸出が規制されている炭素繊維を、経済産業大臣の許可を受けることなく、22年1月、韓国を経由して中国に輸出した。27年5月、同役員らを外為法違反(無許可輸出)で逮捕した(兵庫)。

(3)対北朝鮮措置に関係する違法行為の取締り

我が国は、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験を受けて、国際連合安全保障理事会決議に基づく措置(武器等の輸出入の禁止、人的往来の禁止等)のほか、我が国独自の措置(北朝鮮籍船舶の入港禁止措置、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等)を実施している。警察では、対北朝鮮措置の実効性を確保するため、対北朝鮮措置に関係する違法行為に対し、徹底した取締りを行っており、平成28年3月までに、36件検挙している。

事例

貿易会社役員(61)らは、18年10月14日から北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入禁止措置がとられていたにもかかわらず、22年9月、北朝鮮を原産地とする生松茸(たけ)を中国産と偽り、経済産業大臣の承認を受けることなく、中国・吉林及び上海を経由して北朝鮮から輸入した。27年3月、同役員らを外為法違反(無承認輸入)で逮捕した(京都、山口、島根、神奈川)。

 
生松茸産地偽造輸入経路


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