第5節 道路交通秩序の維持
1 交通指導取締り
(1)悪質性・危険性・迷惑性の高い運転行為への対策
警察では、平成25年12月に有識者懇談会において取りまとめられた「交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する提言」を踏まえ、機動的な交通街頭活動をより一層推進し、違法行為の未然防止に努めるとともに、交通事故の分析結果、地域住民からの取締り要望等を踏まえ、無免許運転、飲酒運転、著しい速度超過、交差点関連違反等の交通事故に直結する悪質性・危険性の高い違反及び駐車違反等の迷惑性が高い違反に重点を置いた取締りに努めている。
また、速度管理や速度取締りに関する指針を設定・公表して、国民への情報発信に努めている。
27年中は、705万5,982件の道路交通法違反を取り締まっている。
白バイの活動
コラム 新たな速度違反取締装置の導入
警察庁では、取締りスペースの確保が困難な道路や警察官の配置が困難な深夜等の時間帯において速度取締りが行えるよう、新たな取締り装置の研究を進めている。
平成28年3月からは、海外で導入実績があり、生活道路での取締りに使用できる小型の速度違反取締装置を埼玉県及び岐阜県に試行的に配備し、その取締り効果や運用方法について検証を進めており、検証結果を踏まえ、全都道府県警察への導入を図ることとしている。
可搬式
半可搬式
固定式
(2)使用者等の責任追及等
事業活動に関して行われた過労運転、過積載運転、放置駐車、最高速度違反等の違反やこれらに起因する事故事件について、運転者の取締りにとどまらず、使用者に対する指示や自動車の使用制限命令を行っているほか、これらの行為を下命・容認していた使用者等(注)を検挙するなど、使用者等の責任追及に努めている。
また、タクシーやトラック等の事業用自動車の運転者が、その業務に関して行った道路交通法等に違反する行為については、運輸支局等に通知して所要の行政処分等を促し、事業用自動車による交通事故防止に努めている。
さらに、自動車整備業者等による車両の不正改造等、事業者による交通の安全を脅かす犯罪に対しても、取締りを推進している。
事例
平成27年4月、ブレーキの整備を十分に実施しないまま走行した事業用大型乗用自動車(観光バス)が、信号停止中の事業用大型乗用自動車に追突し、両車両の乗客15人が負傷した。この交通事故を端緒として、追突した観光バスを所有していた会社の代表取締役(68)及び整備担当者(70)を同年9月に道路交通法違反(整備不良車両運転)で検挙するとともに、同年10月には同社に両罰規定を適用した(静岡)。
観光バスの交通事故状況
(3)暴走族等対策
全国の暴走族構成員数は減少傾向にあるものの、暴走族等に関する110番通報件数は1年間で3万件を超えており、いまだ高い水準にある。
暴走族の引き起こす犯罪は、道路交通関係法令違反のほか、刑法犯等様々な罪種にわたっていることから、共同危険行為等の現場検挙を始め、各種法令を適用した取締りを推進している。また、中学校・高校において暴走族加入阻止教室を開催しているほか、家庭、学校、保護司等と連携し、暴走族から離脱させるための措置を執るなど、総合的な暴走族対策を推進している。
暴走族等総合対策会議(5月、三重)
さらに、元暴走族構成員等が中心となって結成された「旧車會」等と呼ばれる集団の中には、暴走族風に改造した旧型の自動二輪車等を連ねて、大規模な集団走行を各地で行うなど、地域住民や道路利用者に多大な迷惑を及ぼしているものもあることから、関係機関と連携して騒音関係違反(注)等に対する指導取締りを行っている。
旧車會に対する取締り