第4章 組織犯罪対策

3 犯罪収益の剥奪

犯罪収益が、犯罪組織の維持・拡大や将来の犯罪活動への投資等に利用されることを防止するためには、これを剥奪することが重要である。警察では、没収(注1)・ 追徴(注2)の判決が裁判所により言い渡される前に犯罪収益の隠匿や費消等が行われることのないよう、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に定める起訴前の没収保全措置を積極的に活用して没収・追徴の実効性を確保している。

注1:物の所有権及び金融債権を剥奪して国庫に帰属させる処分を内容とする財産刑
注2:没収することができる物又は金融債権の全部又は一部を没収することができない場合に、その価額の納付を強制する処分

(1)没収・追徴の状況

第一審裁判所において行われる通常の公判手続における組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況は、図表4-26のとおりである。

 
図表4-26 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成22~26年)
図表4-26 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成22~26年)
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(2)起訴前の没収保全

平成27年中における起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法で風営適正化法違反、賭博、売春防止法違反、詐欺、ヤミ金融事犯、不法就労助長事犯等に関して220件(前年比27件(14.0%)増加)発出され、麻薬特例法で14件(前年比2件(12.5%)減少)発出されている。

 
図表4-27 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成23~27年)
図表4-27 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成23~27年)
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事例

飲食店経営者の男(28)らは24年12月から27年2月までの間、無許可で風俗店を営んでいた。同月、同経営者らを風営適正化法違反(無許可営業)で逮捕するとともに、裁判官に対し、組織的犯罪処罰法の規定に基づき、同月から同年3月にかけて、起訴前の没収保全命令の請求を行った結果、同経営者の親族名義の普通預金口座に滞留する犯罪収益である預金債権等合計約2,400万円に対して、同命令が発出された(群馬)。



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