第2節 薬物銃器対策
1 薬物情勢
平成27年中の薬物事犯の検挙人員は1万3,524人と、引き続き高い水準にあるほか、船舶を利用した覚醒剤の大量密輸入事犯が25年から27年にかけて相次いで検挙されるなど、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。
(1)各種薬物事犯の状況
① 覚醒剤事犯
平成27年中の覚醒剤事犯の検挙人員(注)及び押収量は図表4-9のとおりである。検挙人員は前年より増加し、全薬物事犯の検挙人員の81.5%を占めている一方、粉末押収量は429.7キログラムと、前年より57.8キログラム(11.9%)減少した。近年の覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち半数程度を暴力団構成員等が占めていることのほか、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことや30歳代以上の検挙人員が多いことが挙げられる。
② 大麻事犯
27年中の大麻事犯の検挙人員及び押収量は図表4-9のとおりである。検挙人員は2,101人と、前年より340人(19.3%)増加し、最近5年間で最多となった。また、大麻事犯の検挙人員は、全薬物事犯の検挙人員の15.5%を占めており、依然として覚醒剤事犯に次ぐ高水準で推移している。近年の大麻事犯の特徴としては、覚醒剤事犯とは異なり、全検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。
③ その他の薬物事犯
最近5年間のMDMA(注)等合成麻薬事犯、あへん事犯等の各種薬物事犯の検挙人員及び押収量は、図表4-9のとおりである。
(2)危険ドラッグ(注1)をめぐる状況
危険ドラッグ事犯の検挙人員の推移は、図表4-10のとおりであり、平成27年中の検挙人員は1,196人と、前年より356人(42.4%)増加した。
警察や関係機関による取締りの強化を受けて、危険ドラッグの販売店舗については27年7月に全て閉鎖されたことが確認された(注2)一方で、インターネットを利用した販売等、その販売・流通ルートの更なる潜在化が懸念される。
注2:厚生労働省の調査によると、26年3月末現在には215店舗あったとされている。
(3)薬物密輸入事犯の状況
平成27年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は240件と、前年より5件(2.0%)減少した。
覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-12のとおりである。27年中の検挙件数は前年より減少し、7年ぶりに100件を下回った。しかし、いわゆる運び屋(注)による手荷物への隠匿、船舶コンテナ貨物の利用等の巧妙な手口により覚醒剤を密輸入する事例が依然としてみられ、こうした事例の背後では国際的な薬物犯罪組織の関与がうかがわれる。
事例
メキシコ人の男(42)らは、27年8月から同年10月にかけて、覚醒剤水溶液をテキーラボトルに隠匿し、メキシコから船舶コンテナで密輸入した。同年11月までに、同男らメキシコ人2人及び日本人3人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕し、覚醒剤約171.2キログラムを押収した(千葉、神奈川)。
テキーラボトルに隠匿された覚醒剤水溶液
(4)薬物犯罪組織の動向
① 薬物事犯への暴力団の関与
平成27年中の暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員は5,712人と、前年より312人(5.2%)減少したものの、覚醒剤事犯の全検挙人員の51.8%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。
② 来日外国人による薬物事犯
27年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は410人と、前年より17人(4.0%)減少した。国籍・地域別でみると、フィリピン、ブラジル及びアメリカの比率が高く、3か国で全体の40.2%を占めている。また、27年中の来日外国人による覚醒剤事犯の営利犯(注)の検挙人員を国籍・地域別でみると、イラン人が52.6%と最も高くなっており、イラン人による覚醒剤の密売ルートが根強く存在していることがうかがわれる。