第1章 警察の組織と公安委員会制度

公安委員の声


「忠恕(ちゅうじょ)」の心で


東京都公安委員会委員長

渡邊 佳英(わたなべ よしひで)


委員就任  平成22年10月20日

委員長就任 平成27年11月13日


平成26年8月、警視庁管内の警察署において、公園で高齢の男性が倒れているとの通報で現場に駆けつけた警察官が、この男性が認知症を患っているということに気付かず、「大丈夫だから」という男性の言動を過信したため十分な措置を講ずることができなかったことから、男性が死亡してしまうという事案が発生した。

高齢化が急速に進行する中、今後、認知症やその疑いのある高齢者への対応を求められる現場がさらに増加していくことが考えられることから、この事案を踏まえ、東京都公安委員会では、警視庁が組織を挙げて高齢者の安全確保を念頭に置いた対策を講ずるべきであると提言した。これを受け、警視庁では、警視総監のリーダーシップの下、迅速な対応がなされ、現在では、全職員を対象とした認知症サポーター養成講座の受講、警察職員のための認知症対応要領ハンドブックの作成、認知症高齢者対策教養DVDの作成等、様々な施策を講ずることとなった。つい先日も、「2025年には、高齢化の進展に伴って認知症患者数が700万人になる」との報道を耳にし、改めて、公安委員会の提言が功を奏した好事例ではないかと感じた次第である。

警察の取り扱う業務は複雑多岐にわたり、日々多忙を極めているが、そうしたときにこそ、公安委員会が、都民・国民の目線に立った提言を行っていくことが大切であると痛感している。

過日、警察学校で、学生1,500名を前に訓育をする機会があり、若い警察官に、私が座右の銘としている「忠恕(ちゅうじょ)」という言葉を贈った。常に誠を尽くし、相手の立場に立って考え行動するという論語の教えであるが、警察職員一人一人が、都民・国民の思いを推し量り、常に寄り添いながら親身に対応して、首都東京の安全・安心を守られることを切に希望している。

 
東京都公安委員会委員長 渡邊 佳英 顔写真

「おまわりさん」という存在


新潟県公安委員会委員

小川 和明(おがわ かずあき)


委員就任  平成19年7月1日


新潟県中越沖地震(平成19年7月16日発生)で自宅が倒壊し、避難所で生活をしている方から届いた礼状を御紹介いたします。

その内容は、「今後の生活をどうしたらよいのか、まったく先行きが見えず、暗澹たる気持ちで避難所におりました。たまたま外出した時、街角に立っているおまわりさんと出会ったら、その瞬間、気持ちがパッと明るくなりました。体に元気と勇気が湧き上がってきたのです。私は地震に負けない。私は頑張る。私は必ずできると思えてきたのです。勇気と元気を与えてくれたおまわりさん、ありがとう。」というものでした。

制服を着てその場にいるだけで、人々を励まし・元気づけ・勇気を与える事ができる存在、それが「おまわりさん」なのでしょう。新潟県中越沖地震の何百倍もの被害が出た東日本大震災でも、このような事例は数多くあったと推察いたします。

こうした「おまわりさん」を励ましたいと考え、警察署協議会の代表者会議でお願いをしました。新潟県中越沖地震の礼状の内容を紹介した後、「新潟県の安心と安全のため、日夜努力している警察官を励まして下さい。警察官も人間ですから間違うこともありますが、存在自体が素晴らしいのです。町中で警察官に会ったら感謝を込めて『おはよう・ご苦労さん・ありがとう』と声を掛けて下さい。このお願いを協議会委員の方々にもお伝え下さい。協議会委員のお知り合いにもお願いいたします。」と。新潟県で「おまわりさん」への感謝の声掛けが広がることを願っております。

 
新潟県公安委員会委員 小川 和明 顔写真


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