トピックス

トピックスII 児童虐待等に対する警察の取組

(1)児童虐待

① 児童虐待を取り巻く情勢

全国の児童相談所での児童虐待相談対応件数は、一貫して増加しており、平成25年度の対応件数は、7万3,802件と、16年度と比較して4万394件(120.9%)増加した。また、26年中の児童虐待事件の検挙件数は、698件と、16年と比較して470件(206.1%)増加しているほか、重篤な児童虐待事例も相次いでおり、児童虐待対策は、警察だけでなく、政府全体の課題となっている。

 
図表II-1 児童虐待相談対応件数(平成16~25年度)
図表II-1 児童虐待相談対応件数(平成16~25年度)
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② 警察における対応

警察では、児童虐待が疑われる情報を認知した場合は、児童の安全を直接確認するため、警察官の現場臨場や付近住民への聞き込み、各種情報の照会等の措置を講じている。また、事案の緊急性・重大性を検討し、的確な事件化を行っているほか、児童の保護や児童相談所への通告を行うなど、児童の安全確認及び安全確保を最優先とした対応を行っており、26年中は2,034人の児童を保護したほか、2万8,923人の児童について、児童相談所への通告を行った。

 
図表II-2 児童虐待事件検挙件数(平成16~26年)
図表II-2 児童虐待事件検挙件数(平成16~26年)
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事例

26年11月、近隣住民から、「夜間にもかかわらず男児がはいかいしている」との通報が警察に寄せられた。警察官が確認したところ、実母(26)が男児(6)を自宅に残したまま夜間の仕事に頻繁に従事していることが判明するとともに、過去にも同様の行為を繰り返しており改善がみられなかったことから、ネグレクトのおそれがあるとして、同男児を保護し、その後、児童相談所に引き継いだ(千葉)。

③ 児童相談所との連携

警察では、児童虐待の早期発見と被害児童の早期保護のため、児童相談所と連携し、児童相談所の職員が行う臨検・捜索(注1)に関する合同研修等の実施や、児童相談所への警察官OBの配置、児童相談所と同一施設への少年サポートセンター(注2)の設置等を推進している。

また、児童相談所の職員による児童の安全確認等に際して、児童相談所長から警察署長に対する援助要請等(注3)がなされた場合には、警察職員も現場に臨場するなどの対応を行っている。

注1:児童虐待の防止等に関する法律第9条の3において、都道府県知事は、正当な理由なく立入調査等を拒んだ保護者が出頭の求めに応じない場合において、児童虐待が行われている疑いがあるときは、当該児童の安全の確認を行い又はその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、裁判官があらかじめ発する許可状により、当該児童の住所若しくは居所に臨検させ、又は当該児童を捜索させることができるとされている。
注2:27年4月1日現在、全国に195か所(うち警察施設以外66か所)の少年サポートセンターが設置されている。
注3:児童虐待の防止等に関する法律第10条において、児童相談所長は、児童の安全確認、一時保護を行う場合において、必要に応じて警察署長に援助を求めることができるとされている。
 
臨検・捜索に関する合同研修の様子
臨検・捜索に関する合同研修の様子

事例

26年2月、「虐待を受けている子供がいる」との相談が警察に寄せられたことから、児童相談所に通告の上、同児童相談所職員と共に児童の安全確認を行ったところ、実父(26)及び実母(23)が男児(3)に首輪を付けた上、窓の錠の部分につないで監禁していることが判明した。同年3月までに、同実父らを逮捕監禁罪で逮捕した。また、同男児については、児童相談所による一時保護が行われた(徳島)。

(2)児童ポルノ

児童ポルノは、児童が性的虐待や性的犯罪の被害を受けている姿の記録そのものであり、児童の人権を著しく侵害する悪質な犯罪である。児童の権利を擁護し、児童ポルノ犯罪から児童を守ることに対する国際的な関心も高く、平成26年6月には、児童買春・児童ポルノ禁止法(注1)の一部を改正する法律が成立した。これにより、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持する行為や、盗撮により児童ポルノを製造する行為が新たに処罰の対象となった(注2)

警察では、改正後の児童買春・児童ポルノ禁止法(注3)に基づき、児童ポルノ事犯の厳正な取締りを行っており、同法が施行された同年7月15日から同年末までの間の盗撮行為による児童ポルノ製造罪の検挙件数は29件、被害児童は28人となっている。

注1:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
注2:自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持又はその電磁的記録の保管を禁止する規定については、27年7月15日から適用された。
注3:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

事例

26年7月、無職の男(48)は、公衆浴場の男性用脱衣場で、腕時計型ビデオカメラを使い、女児2人の裸を盗撮して児童ポルノを製造した。同年8月、同男を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ盗撮製造)で逮捕した(兵庫)。

 
犯行に使用された腕時計型ビデオカメラ
犯行に使用された腕時計型ビデオカメラ

(3)子供対象・暴力的性犯罪

警察では、子供が被害者となる犯罪の発生を未然に防止し、又は発生した場合に迅速に対応できるよう、次のような行為者への対策を行っている。

① 子供女性安全対策班による活動の推進

警察では、平成21年4月、子供や女性を対象とする性犯罪等の前兆とみられる声掛け、つきまとい等の事案に関する情報収集、分析等により行為者を特定し、検挙又は指導・警告等の措置を講ずる子供女性安全対策班(JWAT(注))を警視庁及び道府県警察本部に設置した。これにより、従来の検挙活動等に加え、これらの先制・予防的活動を積極的に推進していくことによって、子供や女性を被害者とする性犯罪等の未然防止に努めている。

注:Juvenile and Woman Aegis Teamの略

事例

26年10月、登校中の女児(7)に「ちょっと、ストップ」と声を掛け、手で女児の下腹部を押し、携帯電話を同女児のスカート内に差し入れ、撮影するというわいせつ事案の通報を受け、子供女性安全対策班等において捜査を行った。その結果、行為者の男(32)を特定し、同月、同男を強制わいせつ罪で逮捕した(香川)。

② 子供対象・暴力的性犯罪出所者の再犯防止措置制度の強化

警察では、17年6月から、13歳未満の子供を被害者とした強制わいせつ等の暴力的性犯罪で服役して出所した者について法務省から情報提供を受け、各都道府県警察において、その出所者の所在確認を実施している。また、23年4月からは、必要に応じて当該出所者の同意を得て面談を行うなど、再犯防止に向けた措置の強化を図っている。



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