特集 組織犯罪対策の歩みと展望

第3節 今後の展望

1 組織犯罪対策の現状と課題

警察においては、これまで、暴力団対策、薬物銃器対策、国際組織犯罪対策及び犯罪収益対策を一元的に所掌する体制を整備し、総合的な組織犯罪対策を推進してきた。暴力団対策については、暴力団対策法の効果的な運用や戦略的な取締りによって、山口組・工藤會の中枢幹部を多数検挙するなどの成果を上げているほか、暴力団排除活動も大きく進展している。また、薬物の密輸・密売事犯や、不法滞在者等による組織的な犯罪、悪質な犯罪インフラ事犯に対しては、国内外の関係機関と連携した取締りを進めてきた。加えて、犯罪収益移転防止法が制定され、疑わしい取引に関する情報が捜査等に効果的に活用されるようになるなど、犯罪収益対策の取組も進展している。

他方で、犯罪組織は、警察による取締りを逃れつつ、より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るためにその活動を変化させており、依然として社会に対する大きな脅威となっている。特に、暴力団は、経済・社会の発展等に対応して資金獲得活動を多様化させてきており、近年は、暴力団の威力を示す必要のない方法により資金を獲得する傾向等がみられることに加え、暴力団関係企業や共生者を利用するなどして資金獲得活動を不透明化・巧妙化させている。また、暴力団排除活動の進展等の情勢の変化に対応できない大規模な暴力団の末端組織や中小規模の暴力団は、組織を支える資金や人材が不足する状況に追い込まれている一方で、山口組を始めとする主要団体の中枢組織は、依然として強固な人的・経済的基盤を維持しており、暴力団の二極化が進んでいると考えられる。

薬物情勢については、依然として覚醒剤事犯の検挙人員が高水準にあり、その密売が暴力団等の重要な資金源となっているとみられるほか、危険ドラッグの撲滅が政府を挙げて取り組むべき重要な課題となっている。また、犯罪インフラが国内に根強く存在し、国際犯罪組織の暗躍を容易にしていることが懸念される。

さらに、特殊詐欺については、巧妙に組織化されたグループにより敢行されていることなどから、組織犯罪対策の手法を活用して犯行グループそのものを壊滅し、その撲滅を図ることが喫緊の課題となっている。



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