第5章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向

① 批判活動の展開

右翼は、平成26年中、領土問題、歴史認識問題のほか、朝日新聞による慰安婦報道の検証記事の掲載等を捉え、これに抗議する街頭宣伝活動等に取り組んだ。

 
右翼の街頭宣伝活動(2月、島根)
右翼の街頭宣伝活動(2月、島根)

中国をめぐっては、同年5月及び6月、中国軍機が東シナ海の公海上空で我が国の自衛隊機に異常接近したことや、中国漁船による小笠原諸島沖でのさんごの密漁問題を捉えた活動を行った。北朝鮮をめぐっては、拉致問題を捉えた活動を、韓国をめぐっては、同年6月、韓国海軍が竹島沖の日本領海を含む海域で射撃訓練を実施したことや歴史認識をめぐる問題を捉えた活動を、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉えた活動をそれぞれ行い、関係国、日本政府等を批判した。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表5-9のとおりである。

 
図表5-9 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成26年)
図表5-9 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成26年)
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② 右翼関係事件の状況

26年中、「テロ、ゲリラ」事件の発生はなかったものの、河野洋平元衆議院議長宅前において、抗議文を所持した右翼活動家の男が、ナイフで自らの手首を切りつける事案が発生し、銃刀法違反(所持)で同人を現行犯逮捕した。

近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図表5-10のとおりである。

 
図表5-10 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成22~26年)
図表5-10 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成22~26年)
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このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況並びに右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は図表5-11のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件
 
図表5-11 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成26年)
図表5-11 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成26年)
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(2)右翼対策の推進

① テロ等重大事件の未然防止に向けた違法行為の検挙

警察では、右翼によるテロ等重大事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況
街頭宣伝活動に対する取締り状況

事例

政治団体代表(63)らは、資金獲得目的で、被疑者が代表を務める土木業者が、福島第一原発事故後も営業を続けていたにもかかわらず、同事故により休業を余儀なくされた旨の虚偽の内容が記載された賠償金の請求書等を電力会社に提出し、営業損害賠償金を詐取した。平成26年7月末までに、関係事件を含め同代表ら7人を詐欺罪等で逮捕した(大阪、宮城、福島)。

② 街頭宣伝車対策の推進

警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。

 
図表5-12 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成26年)
図表5-12 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成26年)
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(3)右派系市民グループ

① 右派系市民グループをめぐる情勢

平成26年中、在特会(注)を始め、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国におけるデモは約120件に及んだ。

注:在日特権を許さない市民の会
 
右派系市民グループのデモ(11月、東京)
右派系市民グループのデモ(11月、東京)

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力(以下「反対勢力」という。)が、一部の参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

右派系市民グループは、同年7月の舛添東京都知事の韓国への訪問や同知事のその後の発言を捉えた抗議行動にも活発に取り組んでおり、特に、同年8月、都庁前で行われた右派系市民グループ主催の街頭宣伝活動には数百人が参加した。また、朝日新聞による慰安婦報道の検証記事の掲載等を捉え、各地でデモや街頭宣伝活動等の抗議行動に取り組んだ。

右派系市民グループは、引き続き、内外の諸問題に敏感に反応し、デモや街頭宣伝活動等により自らの主張を訴えるものとみられ、その過程で、反対勢力とのトラブルに起因する、違法行為の発生が懸念される。

② 違法行為の未然防止と取締り

警察は、右派系市民グループと反対勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じている。

26年中は、同年5月、埼玉県で行われたデモの前に在特会の会員と反対勢力の男がもみ合いとなり、双方を暴行罪で逮捕した。また、同年8月に都内の路上において在特会の会員らが反対勢力に対して暴行を加えたとして、同年10月、同会員ら5人を傷害罪で逮捕した。

警察は、引き続き、違法行為を認知した際には、法と証拠に基づき厳正に対処することとしている。



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