第1章 警察の組織と公安委員会制度

第2節 公安委員会の活動

1 公安委員会の活動

(1)国家公安委員会

① 組織

国家公安委員会は、国務大臣たる委員長及び5人の委員によって組織されている。委員は内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。

 
図表1-3 国家公安委員会の構成(平成27年6月1日現在)
図表1-3 国家公安委員会の構成(平成27年6月1日現在)
② 活動

国家公安委員会では、国家公安委員会規則の制定、地方警務官(注)の任命や懲戒処分、指定暴力団の指定に際しての実質目的要件に該当する旨の確認等、警察法やその他の法律に基づきその権限に属させられた事務を行うほか、警察職員による各種の不祥事案の防止対策に関し警察庁を指導することなどにより、警察運営に関する大綱方針を示し、警察庁を管理している。

平成26年中には、警察における特定秘密に係る業務の適正の確保に関する規則等、12の国家公安委員会規則を制定した。

国家公安委員会は、通常、毎週木曜日に定例会議を開催している。また、委員相互の意見交換や警察庁からの報告の聴取を行うほか、都道府県公安委員会委員との意見交換や警察活動の現場の視察を行うことなどにより、治安情勢と警察運営の把握に努めている。また、このような活動の状況について、ウェブサイトで紹介している。

注:都道府県警察の警視正以上の階級にある警察官
 
国家公安委員会の定例会議
国家公安委員会の定例会議

事例

27年1月、国家公安委員会委員長は、福井県を訪れ、美浜発電所を視察し、原子力関連施設の警戒部隊を督励したほか、警察学校における訓練状況、北朝鮮によるアベック拉致容疑事案の発生現場周辺等を視察した。

 
美浜発電所の警戒部隊を督励する国家公安委員会委員長
美浜発電所の警戒部隊を督励する国家公安委員会委員長

事例

26年6月、国家公安委員会定例会議における「脱法ドラッグ」の乱用者が引き起こした交通事故の報告を受け、「脱法ドラッグ」への対策やその呼称の在り方について議論を行い、対策の強化や呼称の見直しを求めた。これを受け、同年7月、警察庁及び厚生労働省は、「脱法ドラッグ」に代わる新たな呼称を広く国民から募集して検討を行い、規制の有無を問わず使用することが危ない物質であることを明確に示す呼称として「危険ドラッグ」を選定した。

事例

27年2月、国家公安委員会委員は、宮城県を訪れ、県公安委員会委員と治安情勢等に関して意見交換を行ったほか、東日本大震災において津波により大きな被害を受けた地域を視察し、震災時の避難誘導中に殉職した警察官の名前が刻まれた慰霊碑に献花をした。

 
慰霊碑に献花をする国家公安委員会委員
慰霊碑に献花をする国家公安委員会委員

(2)都道府県公安委員会

① 組織

都道府県公安委員会及び方面公安委員会は、都、道、府及び指定県では5人、それ以外の県及び北海道の各方面では3人の非常勤の委員によって組織されており、委員は都道府県知事が都道府県議会の同意を得て任命する。ただし、道、府及び指定県の場合は、委員のうち2人の任命は当該道、府及び県が包括する指定市の市長がその市議会の同意を得て推薦した者について行う。

 
図表1-4 都道府県公安委員会委員の構成(平成26年12月31日現在)
図表1-4 都道府県公安委員会委員の構成(平成26年12月31日現在)
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② 活動

都道府県公安委員会は、運転免許、交通規制、犯罪被害者等給付金の裁定、古物営業等の各種営業の監督等、国民生活に関わりのある数多くの行政事務を処理するとともに、管内における事件、事故及び災害の発生状況等を踏まえた警察の取組、組織や人事管理の状況等について、定例会議の場等で、警察本部長等から報告を受け、これを指導することにより、都道府県警察を管理している。

都道府県公安委員会は、おおむね月3回ないし4回の定例会議を開催するほか、警察署協議会への参加、教育委員会等の関係機関との協議、警察活動の現場の視察等により、治安情勢と警察運営の把握に努めている。また、このような活動の状況について、ウェブサイトで紹介している。

 
高知県公安委員会のウェブサイト
高知県公安委員会のウェブサイト

事例

平成26年1月、佐賀県公安委員会委員は、擬似的な交通環境がスクリーンに表示され、自転車乗用中の交通ルールと正しい交通マナーを実践的に学ぶことが可能な自転車シミュレーターの体験等を行った。

 
自転車シミュレーターを体験する佐賀県公安委員会委員
自転車シミュレーターを体験する佐賀県公安委員会委員

事例

26年4月、岡山県公安委員会委員は、通信指令室において、110番事案が多発する地点に設置された街頭防犯カメラ等のリアルタイムの映像を通信指令業務に活用するシステムを視察した。

 
通信指令システムの説明を受ける岡山県公安委員会委員(左側)
通信指令システムの説明を受ける岡山県公安委員会委員(左側)

(3)苦情処理及び監察の指示

警察法には苦情申出制度が設けられており、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し文書により苦情の申出をすることができ、都道府県公安委員会は、原則として処理の結果を文書により申出者に通知している。平成26年中は、全国の都道府県公安委員会において930件の苦情を受理した。

なお、警察本部長や警察署長に対して申出があったものなど、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情でこの制度によらない申出についても、処理の結果を申出者に通知するなどの対応を行っている。

 
図表1-5 苦情申出制度の概要
図表1-5 苦情申出制度の概要

また、警察法の規定により、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な監察の指示をすることができる。

(4)公安委員会相互間の連絡

国家公安委員会と各都道府県公安委員会は、相互に独立した機関であるが、その職務の性質から、常に緊密な連携を保つため、各種の連絡会議を開催している。平成26年中は、国家公安委員会と全国の都道府県公安委員会との連絡会議を2回開催し、警察署協議会の活動状況等について意見交換を行った。

また、26年中は、各管区及び北海道において、管内の府県公安委員会相互、道公安委員会と方面公安委員会相互の連絡会議が合計13回開催され、国家公安委員会委員も出席し、各道府県の治安情勢やそれぞれの取組についての報告や意見交換が行われたほか、都、道、府及び指定県の公安委員会相互の連絡会議が開催された。

 
全国公安委員会連絡会議
全国公安委員会連絡会議

事例

26年5月、神奈川県において、東京都、北海道、大阪府、京都府及び12の指定県の公安委員会委員を対象とする16都道府県公安委員連絡会議が開催され、公安委員会宛ての苦情の申出等の現状や公安委員会の役割と活動の充実について議論を行った。

 
16都道府県公安委員連絡会議
16都道府県公安委員連絡会議


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