第4章 組織犯罪対策 

3 犯罪収益の剥奪

犯罪収益が、犯罪組織の維持・拡大や将来の犯罪活動への投資等に利用されることを防止するため、これを.奪することが重要である。警察では、没収(注1)・追徴(注2)の判決が裁判所により言い渡される前に犯罪収益の隠匿や費消等が行われることのないよう、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に定める起訴前の没収保全措置を積極的に活用して没収・追徴の実効性を確保している。

注1:物の所有権及び金銭債権を.奪して国庫に帰属させる処分を内容とする財産刑

注2:没収することができる物及び金銭債権の全部又は一部を没収することができない場合に、その価額の納付を強制する処分

(1)没収・追徴の状況

第一審裁判所において行われる通常の公判手続における組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況は、図表4-21のとおりである。

 
図表4-21 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成20~24年)
図表4-21 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成20~24年)
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(2)起訴前の没収保全

平成25年中における起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法で風営適正化法違反、売春防止法違反、賭博、詐欺、ヤミ金融事犯等に関して160件(前年比12件(8.1%)増加)発出され、麻薬特例法で4件(前年比12件(75%)減少)発出されている。

 
図表4-22 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成21~25年)
図表4-22 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成21~25年)
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事例

自営業の男(46)は、24年9月頃から25年6月頃までの間、薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けないで、業として、無承認医薬品をインターネットを利用して販売していた。同年6月、被疑者を薬事法違反(業として行う医薬品の販売等)で逮捕するとともに、裁判官に対し、組織的犯罪処罰法の規定に基づき、起訴前の没収保全命令の請求を行った結果、自己名義の預貯金口座に滞留する犯罪収益である預金債権等合計約1,170万円に対して、同命令が発出された(京都)。


 第4節 犯罪収益対策

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