第3章 サイバー空間の安全の確保 

4 技術支援と解析能力の向上

(1)犯罪の取締りへの技術支援

コンピュータ、携帯電話等の電子機器が普及するとともに、情報通信技術の進展によりスマートフォンのような新たな電子機器が登場し、あらゆる犯罪に悪用されるようになってきており、こうした犯罪の取締りにおいても高度な技術的知見が必要となっている。

このため、警察では、警察庁及び地方機関(注)に情報技術解析課を設置し、都道府県警察に対して、捜索差押え現場でコンピュータ等を適切に差し押さえるための技術的な指導や、押収した携帯電話等から証拠となる情報を取り出すための解析を実施する技術支援を行っている。

また、近年、不正プログラムを悪用したサイバー犯罪・サイバー攻撃の多発等により、不正プログラムの解析の需要が増大していることに加え、手口の巧妙化により、その解析には極めて高い技術力が求められていることから、警察では、警察庁高度情報技術解析センターを中心に、組織の総合力を発揮して不正プログラムの解析に取り組んでいる。

注:30頁参照

 
図表3-15 犯罪の取締りへの技術支援
図表3-15 犯罪の取締りへの技術支援

(2)対応力強化に向けた取組

① 海外製スマートフォンへの対応

スマートフォンの急速な普及に伴い、その解析の需要が年々増大している。解析の対象となるスマートフォンの半数以上は海外製のものであることから、警察では、関係機関と連携して海外製スマートフォンの解析を行うなど、海外製スマートフォンへの対応力を更に強化している。

② 最先端の情報通信技術への対応

警察では、急速に進展する情報通信技術に対応するため、最新の電子機器や通信履歴(ログ)の解析等に対応するための解析用資機材の充実、インターネット観測技術の高度化やデジタルフォレンジックを取り巻く課題とその対応に関する調査研究の外部委託等、解析能力の向上を図る取組を推進している。また、警察大学校サイバーセキュリティ研究・研修センターにおいて、犯罪に悪用され得る最先端の情報通信技術の研究を行っている。

研究例 匿名化通信技術に関する研究

匿名化通信技術は、インターネット上で匿名性を確保し、利用者の発信元を特定されずに通信を行うために使用される技術である。この技術が犯罪に悪用されれば、犯行に使用されたコンピュータを追跡することが困難となる。そこで、サイバーセキュリティ研究・研修センターでは、この技術が悪用された際の発信元の特定につながる手掛かりを発見するための解析手法や、悪用による被害を防止するためのアクセス防御手法について研究を行っている。

 
匿名化通信技術に関する研究の状況

匿名化通信技術に関する研究の状況


 第2節 サイバー空間の脅威への対処

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