特集II 子供・女性・高齢者と警察活動

1 子供・女性・高齢者を守る社会づくり

(1)犯罪防止に配慮した環境整備等の推進

警察庁意識調査では、子供・女性・高齢者の犯罪被害を防止するために、警察に要望することとして、「見通しの悪い場所や暗がりを減らすなどの防犯環境の改善」「街頭防犯カメラの設置台数の増加」といった犯罪防止に配慮した環境整備等を求める回答が寄せられた。

警察では、地方公共団体、事業者、地域住民等と連携し、道路、公園、繁華街等において、犯罪防止に効果的な構造・設備等を採用するなど犯罪防止に配慮した環境整備や環境浄化活動を推進している(106頁参照)。具体的には、通勤・通学路における緊急通報装置の整備、繁華街等における街頭防犯カメラの整備や違法広告物の除去、道路・公園・駐車場等における街路灯の整備や植栽の剪定(せんてい)による見通しの確保等が挙げられる。

事例①

東京都足立区においては、有識者や警察の協力の下、独自に作成したガイドラインに基づき、一定の宅地開発事業において、住宅及び周辺施設の防犯性を一体的に評価・認定する「防犯設計タウン認定制度」を平成23年10月に創設した。住宅や道路・公園の配置や防犯設備等の設置について計画段階から区が関与するとともに、町会・自治会の設立や住民による門灯・玄関灯の夜間点灯等に関するルール作り等の自主的な活動について認定の基準を設けることにより、安全・安心で持続可能なまちづくりを推進している。また、認定された地域において、警察等と連携したパトロールの充実が図られるなど、運用面から後押しする取組も実施されている(警視庁)。

 
防犯設計タウン認定の証
防犯設計タウン認定の証

事例②

深夜の少年い集の常態化や性犯罪の発生等により、利用者から不安の声が高まっていた都市公園について、警察、自治体、事業者、大学、防犯ボランティア団体、自治会等をメンバーとする対策会議において防犯対策を検討した。その結果、自治体による犯罪防止に配慮した環境設計に基づく公園の大規模改修、警察による公園内への交番の移設(25年度予定)、事業者等から成る協議会による周辺地域における街頭防犯カメラの整備、地域住民や大学生等の防犯ボランティアによる落書き消し等の環境浄化活動等が実施されるに至った(福岡)。

 
福岡市警固公園
福岡市警固公園

(2)多様な主体の参加による安全・安心な社会の実現に向けた取組

これまでも、警察と地方公共団体、事業者、地域住民等が相互に連携協力し、参加型の犯罪予防活動等を実施することにより、社会の安全・安心を確保する取組が行われている(84、106~108頁参照)。その中には、子供見守り活動や、性犯罪被害防止活動、高齢者宅巡回活動等、子供・女性・高齢者に関するものが多く含まれている。

また、狭義の治安対策にとどまらず、交通・医療・福祉・教育等、社会各分野の機関・団体等が連携して、総合的な社会の安全・安心を確保しようとする動きが一部にみられる(下記コラム参照)。

このように多様な主体が参加して行われる取組は、社会の基礎たる「安全」の重要性等に関する正しい認識を社会に根付かせ、「安心」の土壌を造るとともに更なる活動参加を生むなど、安全・安心な社会を実現するために有効な手段である。そこで、警察では、こうした取組や活動が多様な主体の参加により持続可能なものとなるよう、犯罪予防活動の重要性の説明やネットワークの整備、情報の提供等を実施している。

事例

島根県松江市川津地区では、公民館を拠点として自治会連合会等が中心となり、大学生、PTA、商店街振興組合等の多様な主体が参加して防犯活動を実施している。子供の登下校の時間帯における街頭での見守り活動や青色回転灯を活用してのパトロール活動、振り込め詐欺防止・万引き防止キャンペーンを実施している。本活動は、学生ボランティアに対する地域の受け皿となり、若年層の自主防犯意識の高揚と将来への持続可能性を高めることにつながっている(島根)。

コラム⑨ 東京都豊島区のセーフコミュニティ活動

総合的な社会の安全・安心の確保に向けた取組の代表例として、東京都豊島区におけるセーフコミュニティ活動を挙げることができる。セーフコミュニティ活動とは、「けがや事故等は、偶然の結果ではなく、原因を究明することによって予防できる」という理念の下、安全と健康の質を高めていくまちづくり活動のことであり、世界保健機関(WHO)による国際認証(注1)制度が設けられている。

豊島区の場合、様々な機能が集積する都市である一方で、犯罪防止や環境浄化、災害対策、交通安全対策、人口流動対策、独居高齢者対策等の大都市特有の安全面での課題を抱えていたことから、区を中心に、地元警察署を始めとした関係機関・団体等(注2)がメンバーとなった推進協議会や、児童虐待防止、配偶者からの暴力(DV)防止、高齢者の安全確保等の重点課題ごとの対策委員会における協議を通じて、総合的な安全・安心を確保する体制がとられており、警察も構成員として、統計データの提供や活動の指標作成のための作業等を実施している。

取組の一例としては、「虐待と暴力のないまちづくり宣言」に基づき、児童虐待やDV等を根絶するための施策が複数機関によって推進されており、警察も、犯罪の取締りのほか、情報の提供や研修プログラムの実施等を行っている。

本取組は、「社会の安全・安心」をキーワードに、大都市において自治体が中心となり、多数の関係機関・団体等が連携してまちづくりを行う取組として画期的なものであり、平成24年11月に国際認証を取得し、現在も継続的に実施されている。

注1:我が国においては、豊島区ほか5市町(京都府亀岡市、青森県十和田市、神奈川県厚木市、長野県箕輪町、同県小諸市)が認証を取得している(平成25年3月現在)。
注2:具体的には、区内の防犯協会、消防団、町会、商店街連合会、PTA連合会、地元の大学、警察署、消防署等が挙げられる。
 
セーフコミュニティ(豊島区)の推進体制
セーフコミュニティ(豊島区)の推進体制
 
豊島区へのセーフコミュニティ国際認証授与式
豊島区へのセーフコミュニティ国際認証授与式
 
セーフコミュニティ(豊島区)が実施する取組例
セーフコミュニティ(豊島区)が実施する取組例


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