第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

4 事件・事故への即応

交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際、直ちに現場に向かい、犯人の逮捕等の措置を執っている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけられるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の活用による機動力の強化に努めている。

(1)110番通報

平成24年中の110番通報受理件数(注1)は、約935万件と前年より約2万件減少したが、依然として高い水準にある。これは、約3.4秒に1回、国民約14人に1人の割合で通報したことになる。また、携帯電話等の移動電話からの110番通報が67.5%を占めている。

これらの110番通報のうち、緊急の対応を必要としない各種照会、要望・苦情・相談等の通報が24.7%を占めていることから、警察では、110番通報を適切に利用し、緊急の対応を必要としない通報には専用の「#(シャープ)9110」番(注2)を利用するよう呼び掛けている。

注1:無応答、いたずら、誤接等は計上していない。
注2:56頁参照
 
図2-33 110番通報受理件数の推移(平成15~24年)
図2-33 110番通報受理件数の推移(平成15~24年)
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(2)通信指令システム

110番通報に迅速かつ的確に対応するため、都道府県警察に通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備(注1)の発令等を行っている。平成24年中の緊急配備の実施件数は9,521件(前年比108件減少)であった。

また、24年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイム(注2)の平均は、7分1秒であった。

警察では、増加する携帯電話等からの110番通報に的確に対応するため、携帯電話等で110番通報した際に、音声通話と同時に発信者の位置情報が通知されるシステム(位置情報通知システム)を全都道府県において運用するなど通信指令システムの高度化を図っている。

注1:重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、警戒員を配置して行う検問、張り込み等
注2:通信指令室が110番通報を受理し、パトカー等に指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間
 
通信指令室
通信指令室

(3)初動警察活動(注)の強化

① 初動警察刷新強化の取組

警察庁は、平成20年12月、初動警察活動の総合的な強化に向けた基本方針として「初動警察刷新強化のための指針」を策定した。都道府県警察では、この指針を受けて、通信指令機能の強化、事案対応能力の強化等に重点的に取り組んでいる。

注:平時における警察の体制を前提として都道府県警察が行う、事件・事故に即応した初動的な警察活動であり、その指揮に当たる通信指令を含むもの
② 通信指令機能の強化

国家公安委員会は、21年9月、「警察通信指令に関する規則」を制定し、通信指令室が初動警察における司令塔としての役割を果たすことができるよう、その位置付けや権限を明確化するとともに、通信指令を行う際の組織的活動、人材の育成、関係都道府県警察の連携等の原則を定めた。都道府県警察では、同年10月に施行されたこの国家公安委員会規則に基づき、迅速・的確な初動警察活動を推進している。

 
全国通信指令・無線通話技能競技会
全国通信指令・無線通話技能競技会
③ 通信指令を担う人材の育成強化

警察では、110番通報の受理や指令の技能を競う通信指令競技会を開催するなど、通信指令技能の向上を目的とした教育訓練を行うとともに、通信指令の知識・技能に関する検定制度を設けて、組織的な人材育成に努めている。

また、卓越した通信指令技能を有する者として選抜された、警察庁指定広域技能指導官や都道府県警察の技能指導官等が、実践的な指導等を通じて後進の育成に当たっている。

④ 事案対応能力の強化

警察では、治安情勢等を踏まえ、警戒の必要な地域や時間帯に警察用車両等を集中的に投入するなど、警察機動力の連携強化及び運用改善を図っている。

また、事案対応能力の向上を図るため、無差別殺傷事件その他の重大事案の発生に際して行われることとなる一連の警察活動に関する実践的な訓練を継続的に実施している。

 
無差別殺傷事件を想定した初動対応訓練
無差別殺傷事件を想定した初動対応訓練

コラム⑧ 地域警察デジタル無線システムを活用した警察活動

警察では、音声通信のみであった従来の無線システムに代えて、高度化した音声通信機能及びデータ通信機能を有する地域警察デジタル無線システムを整備し、平成23年3月から各道府県警察(注)において順次運用を開始した。

同システムの整備により、通信指令室で受理した110番通報の内容、各種事案の現場で撮影した画像、GPSで測位された警察官の位置情報等の情報を、通信指令室、警察署及び現場の警察官が組織的に共有することが可能となった。

注:警視庁及び岡山県警察においては、独自のデータ端末を整備・使用している。
 
図2-34 地域警察デジタル無線システムの概要
図2-34 地域警察デジタル無線システムの概要

(4)パトカー及び警察用航空機・船舶の活用

警察では、全国の警察本部や警察署に配備したパトカーを活用して、管内のパトロールを行うとともに、事件・事故等の発生時における初動措置を執っている。また、全国に警察用航空機(ヘリコプター)を約80機、警察用船舶を約170隻配備し、通信指令室やパトカーと連携させてその機動力をいかしたパトロール、事件・事故発生時の情報の収集、交通情報の収集、山岳遭難等の事故や災害発生時の捜索救助活動等を行っている。

 
パトカー
パトカー
 
警察用航空機
警察用航空機
 
警察用船舶
警察用船舶

事例①

平成24年12月、八ヶ岳連峰赤岳(長野県茅野市)において、登山者5人が道に迷うなどして遭難した。長野県警察航空隊はヘリコプターを出動させ、捜索活動を行ったところ、5人全員を発見救助した(長野)。

事例②

24年5月、長崎県長崎市野母港(のもこう)沖において、沿岸警戒のため、警察用船舶で航行中、進路前方で溺れている男性(30)を発見したことから、直ちに乗組員4人で当該男性を救助した(長崎)。

コラム⑨ 山岳遭難に対する警察活動

平成24年中の山岳遭難の発生件数は1,988件、遭難者数は2,465人(うち死者・行方不明者は284人)であった。警察では、関係機関・団体等と連携の上、警察用航空機(ヘリコプター)等を活用して、遭難者の捜索救助に当たるとともに、増加傾向にある山岳遭難の防止を図るため、広報啓発活動、山岳関連情報の提供、パトロール等を実施している。

 
図2-35 山岳遭難発生件数(平成20~24年)
図2-35 山岳遭難発生件数(平成20~24年)
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警察用航空機による救助活動
警察用航空機による救助活動
 
山岳警備隊によるパトロール
山岳警備隊によるパトロール

(5)鉄道警察隊の活動

鉄道警察隊は、列車内、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行い、痴漢、すり、置き引き等の犯罪の予防及び検挙を図っている。また、駅構内に置かれている本隊や分駐隊において、痴漢の被害に遭った女性から相談を受理した場合は、女性に同行して警乗を行うなどしている。

 
鉄道警察隊
鉄道警察隊

事例①

平成24年10月、警戒中の鉄道警察隊員が不審な男(70)を発見し、その動向を注視しながら追跡したところ、同人が、買物客の女性が所持していたトートバッグから財布を抜き取り窃取したことから、男を窃盗罪で現行犯逮捕した(千葉)。

事例②

24年12月、女性から電車内において痴漢被害に遭っているとの相談を受けた鉄道警察隊は、同人に同行して電車に乗り込み警戒していたところ、同人の前に立ち体を触る行為をした男(41)を発見し、迷惑防止条例(粗野又は乱暴な行為の禁止)違反で現行犯逮捕した(静岡)。



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