第5章 公安委員会制度と警察活動の支え

5 国際社会における日本警察の活動

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

犯罪のグローバル化に対し、警察庁では、国際刑事警察機構を通じるなどして外国治安機関との情報交換に努めているほか、国際会議への参加、二国間協議の推進等により、協力関係を強化している。

<1> アジア諸国等との連携

東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として、昭和56年、ASEAN 警察長官会合(ASEANAPOL)が結成された。我が国は、平成17年の第25回会合からオブザーバーとして参加し、20年の第28回会合からは、中国、韓国等と共に議題提案権を有する「ダイアログ・パートナー」として参加している。

22年5月には、カンボジア・プノンペンにおいて第30回会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席し、東アジア地域の警察機関の連携・協力関係の強化、テロ情報の共有の重要性等について発言した。

第30回ASEANAPOL

第30回ASEANAPOL

<2> G8各国との連携

警察庁では、G8各国間で行われている治安問題についての議論に積極的に参加するとともに、成果が我が国の国内治安対策の推進に資するものとなるよう、課題の設定及び検討に際し、我が国が主導的な役割を果たすよう努めている。22年2月、4月及び10・11月にカナダで開催されたG8ローマ/リヨン・グループ会合には、警察庁担当者が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。

<3> 二国間の連携

警察では、我が国との間で多くの国際犯罪が敢行される国や来日外国人犯罪者の国籍国を始めとする各国の治安機関との間で協議を行い、必要に応じて警察当局間協力に関する文書を作成するなどして協力関係を深めている。

22年3月には、警察庁長官が韓国を訪問して韓国警察庁長と会談を行い、犯罪のグローバル化等の新たな治安課題に的確に対処するための協力関係を構築することなどについて合意し、同年10月、韓国・ソウルにおいて第1回日韓警察協議を開催した。中国公安部との間では同年6月、中国・北京において第6回日中警察協議を開催した。

また、国家公安委員会委員長が、オーストラリア(22年5月)、ベトナム(同年8月)、セルビア(同年12月)、タイ(23年1月)等各国の治安問題を担当する閣僚と会談を行い、各国治安機関との協力関係を強化した。

国家公安委員会委員長とセルビア内務大臣との間の覚書の署名

国家公安委員会委員長とセルビア内務大臣との間の覚書の署名

<4> 治安に関係する国際約束の締結による協力の確保

刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまで米国、韓国、中国、香港との間で締結したほか、EU との刑事共助協定が23年1月に、ロシアとの刑事共助条約が同年2月にそれぞれ発効した。

また、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付ける犯罪人引渡条約については、米国及び韓国との間で締結している。

警察庁としても、国際犯罪の捜査を行うに当たって各国からの協力を一層確保するとの観点から、これら治安関係国際約束の締結交渉に加わることとしている。

(2)海外の警察に対する支援

警察では、我が国の警察の特性を生かし、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力して、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた知識・技術の移転による海外の警察に対する支援を行っている。

<1> インドネシア国家警察改革支援プログラム

警察庁では、平成13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施するとともに、職員を全体の統括責任者である国家警察長官政策アドバイザー兼プログラム・マネージャーとして派遣している。このプログラムの中核事業である市民警察活動促進プロジェクトは、メトロ・ブカシ警察署及びブカシ県警察署をモデル警察署として、交番制度、犯罪鑑識、通信指令システム等に関する支援の成果を全国に波及させることを目的としている。

警察署幹部に対する指導の様子

警察署幹部に対する指導の様子

<2> 専門家の派遣

警察では、上記事例のほか、フィリピン、マレーシア、ブラジル等に専門家を派遣して交番制度、犯罪鑑識、交通警察等の分野で知識・技術の移転を図っている。22年中には、上記事例も含め、25人の専門家を派遣し、派遣者数は、継続派遣中の者と合わせ37人となった。

<3> 研修員の受入れ

警察では、警察運営、交番制度、犯罪鑑識等の分野における知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、研修員の受入れ体制を整備し、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。22年中には、27回の研修で239人の研修員を受け入れた。

研修員による交番視察の様子

研修員による交番視察の様子

コラム〔7〕 警察による国際緊急援助活動

我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。

23年2月22日午前8時51分(現地時間同日午後0時51分)、ニュージーランド南島クライストチャーチ市付近でマグニチュード6.3の地震が発生し、ニュージーランド政府から要請を受けたことから、我が国政府は同月23日から同年3月12日にかけての18日間、3次にわたり、警察職員38人及び警備犬3頭を含む国際緊急援助隊救助チームを派遣した。同チームは、ビル倒壊現場での被災者の捜索等に従事し、その活動に対して、ニュージーランド政府及び同国民より高い評価と謝意が表明された。

ニュージーランドにおいて捜索活動を実施する国際緊急援助隊

ニュージーランドにおいて捜索活動を実施する国際緊急援助隊


第3節 国民の信頼に応える警察

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