特集II:安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指して

5 終わりに

インターネットは、世界中にある様々な情報の収集のみならず、インターネットショッピング等による経済取引やコミュニティサイトによる交流活動等を行うために気軽に利用されるなど、今や国民生活に必要不可欠なものとなっている。加えて、インターネット関連企業等において、インターネット利用者のニーズに応えるために新たな技術やサービスが生み出され続けており、サイバー空間における利便性は向上し、サイバー空間を利用する上での便益はますます大きくなっている。

その一方で、サイバー空間における犯罪の敢行は、捜査をより困難にしたり、被害をより拡大させるおそれがあり、現に、第1節で示した事例のように、インターネット接続をより簡易にするための機器や施設が犯罪の匿名性を高めてしまったり、情報発信や交流を容易にするサービスが被害の標的となり得る対象を増やすといった状況が見受けられる。

また、国民からのアンケート結果にもみられるように、現実社会と比較して自由度の高いサイバー空間においては、一般のインターネット利用者においても規範意識が必ずしも高いとはいえない状況にある。

警察では、巧妙化し続けるサイバー犯罪に対して、様々な対策を講じてきたところではあるが、サイバー犯罪の情勢はいまだ厳しく、引き続き、警察組織を効果的に活用した捜査体制の構築や新たな手口についての対応を検討していくこととしている。

それらに加え、今後は、インターネット利用者全体に向けた対策をさらに推進し、インターネットを利用する全ての人々が、サイバー空間において高い規範意識を持ち、責任ある行動をとるよう、産業界、関係機関・団体はもとより、インターネットを利用する組織や個人と警察とが連携を強化し、社会を挙げて対策を進めることにより、安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指していく必要がある。


第3節 サイバー犯罪対策の抜本的強化に向けて

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