第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

7 ヤミ金融事犯、悪質商法等

(1)ヤミ金融事犯
 平成21年中のヤミ金融事犯(注1)の検挙状況は表1-3のとおりであり、このうち暴力団が関与する事件は約28.7%であった。
 ヤミ金融事犯は、他人名義の携帯電話や預貯金口座を利用するなど手口が悪質・巧妙化しているため、各都道府県警察に設置している集中取締本部による継続した取締りのほか、被害防止のために、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」に基づく契約者確認の求めや口座凍結依頼等の諸対策を推進している。

注1:出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反(高金利)事件及び貸金業法違反事件並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯

 
広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)
広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)
 
表1-3 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
表1-3 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
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事例
 無登録貸金業者(31)らは、20年4月ころから21年1月ころにかけて、いわゆる名簿屋から購入した多重債務者名簿を基に、全国にダイレクトメールを発送するなどして融資を勧誘し、約300人に対し、法定金利の約110倍から約750倍の利息で金銭を貸し付け、約3億5,000万円の利息等を他人名義の預金口座に振り込ませ、受領するなどした。21年3月までに、9人を出資法違反(超高金利)等で逮捕した(岩手)。

(2)悪質商法

〔1〕 特定商取引等に係る事犯
 平成21年中の特定商取引等に係る事犯(注2)の検挙状況は表1-4のとおりであり、高齢者をねらった、家屋の土台や配管等の点検を口実に不要なリフォーム工事等を高額で行う点検商法や、勝手に家に上がり込み長時間居座るなどして高額な布団等を売り付ける押し付け商法の検挙が目立った。

注2:訪問販売等を規制する特定商取引に関する法律違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等の刑法犯

 
表1-4 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
表1-4 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
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事例
住宅リフォーム会社役員(33)らは、18年9月ころから20年2月ころにかけて、住宅の無料点検を装って主に高齢者宅を訪問し、「床下が湿っていて、柱が腐っているので地震がきたら家が倒れる」などと告げ、不要な耐震補強工事を施工するなどして、約570人から約3億4,000万円をだまし取った。21年9月までに、17人を組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反(組織的な詐欺)等で検挙した(栃木)。
 
悪質業者が施工した不要な耐震補強工事
悪質業者が施工した不要な耐震補強工事

〔2〕 資産形成事犯
 21年中の資産形成事犯(注1)の検挙状況は表1-5のとおりであり、国内外の事業への投資を装って金銭の出資を募る預かり金事犯及び金融商品取引事犯の検挙が大半を占めた。

注1:利殖を目的とした資産運用の各種取引に係る出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律、金融商品取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯

 
広報啓発用リーフレット(企画・編集:(社)全国消費生活相談員協会)
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表1-5 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
表1-5 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
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事例1
 健康機器販売会社役員(75)らは、12年7月ころから19年10月ころにかけて、「当社にお金を1年間預ければ、3か月ごとに9%の利息を支払い、満期には元金を返還します」などと告げて、約4万人から約1,285億円をだまし取った。21年2月、同役員ら22人を組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺)で逮捕した(警視庁、宮城、福島)。

事例2
 投資会社役員(55)らは、16年10月ころから20年11月ころにかけて、「経済成長率の高い海外の未公開株に投資すれば、3年後には出資額の3倍から4倍の金が現金で戻ってくる」などと告げて、約1万人から約218億2,000万円をだまし取った。21年9月までに、同役員ら6人を詐欺罪、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)等で検挙した(千葉、静岡)。

コラム2 悪質商法(特定商取引等事犯・資産形成事犯)被害に関するアンケート結果

 検挙された特定商取引等事犯・資産形成事犯の被害者各100人にアンケート調査を実施した結果、判明した被害状況等は、次のとおりである。
○特定商取引等事犯
・被害者は、一戸建ての居住者が約90%、旧来住宅地(注2)の居住者が約80%を占めた。
・契約事実を家族等に相談しなかった被害者が約70%を占めた。
・「最初の段階で断っていれば被害に遭わなかった」との回答が約60%を占めた。
○資産形成事犯
・被害の発端については、「知人から誘いを受けた」との回答が約60%を占めた。
・投資に当たっては、家族に相談しなかったケースが約60%を占めた。
・投資した理由については、「勧誘員の話を信じ込んだ」との回答が約70%を占めた。
・「事前に業者の手口を知っていれば被害に遭わなかった」との回答が約60%を占めた。

注2:アンケート上の選択肢は、繁華街・旧来住宅地・新興住宅地・農村地帯の4つ

(3)その他の経済事犯
 平成21年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙事件数は21事件、検挙人員は33人で、検挙した事件の主な適用法令は、宅地建物取引業法、建築基準法であった。

 第1節 犯罪情勢とその対策

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