第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

4 事件・事故への即応

 交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際、直ちに発生現場に向かい、犯人の逮捕等の措置をとっている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけられるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の活用による機動力の強化に努めている。

(1)110番通報の現状
 110番通報受理件数は、平成20年中は約892万件と、前年より約6万件減少したが、依然として高い水準にある。これは、3.5秒に1回、国民約14人に1人の割合で通報したことになる。また、携帯電話等の移動電話からの110番通報が63.5%を占めている。
 警察では、毎年1月10日を「110番の日」と定め、110番通報を適切に利用するよう、また、警察による緊急の対応を必要としない相談等の電話には、専用の「#(シャープ)9110」番を利用するよう呼び掛けている。移動電話を用いて110番通報をするときは、所在地や番地、目標物を確認するほか、通話中にはできる限り場所を移動しないことなどを呼び掛けている。
 
図1-35 110番通報受理件数の推移(平成11~20年)
図1-35 110番通報受理件数の推移(平成11~20年)
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(2)通信指令システム
 110番通報に迅速かつ的確に対応するため、都道府県警察に通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、パトカーや交番等の地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備(注1)の発令等を行っている。平成20年中の緊急配備の実施件数は7,679件(前年比139件増加)であった。
 また、20年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイム(注2)の平均は、6分59秒であった。
 警察では、リスポンス・タイムの短縮のため、通報場所を早急に把握できる地理情報システムやパトカーの活動状況を容易に把握できるカーロケータ・システムを導入するなど、通信指令システムの高度化に努めるとともに、21年4月1日現在、警視庁ほか35道府県において、携帯電話等で110番通報した際に、音声通話と同時に位置情報が通知されるシステム(位置情報通知システム)を運用している。21年度中には、新たに千葉県ほか7県で同システムの運用を開始する予定である。

注1:重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、警戒員を配置して行う検問、張り込み等
 2:通信指令室が110番通報を受理し、パトカー等に指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間

 
通信指令室
写真 通信指令室

(3)初動警察刷新強化の取組み
 近年、無差別殺傷事件の相次ぐ発生、局地的かつ短期間に降る大雨による被害の発生等の警察事象の多様化・スピード化を受けて、初動警察(注1)の困難性が増す中で、時代の要請にこたえた初動警察であり続けるため、そのかなめたる通信指令の強化を図り、組織的かつ効率的な活動を推進することが急務となっている。
 このため、警察庁では、平成20年12月、「初動警察刷新強化のための指針」を策定し、都道府県警察では、同指針で示された重点推進事項を「地域警察を中心とした精強な第一線警察構築のための総合プラン」(注2)に盛り込み、各種施策を実施している。
 警察において取り組んでいる施策の主な例は、次のとおりである。
 ・ 通信指令システムの強化
   通信指令室及び警察署通信室において事案の発生現場等の状況を的確に把握するため、現場警察官に画像の送受信機能等を装備した携帯端末を配備している。
 ・ 通信指令に関する教育訓練の充実
   競技会の開催、専門的教育の実施等を通じて、事案判断能力を中心とした通信指令技能の向上を図っている。
 ・ 警察機動力の連携強化及び運用改善
   突発的な事案への対応力の間げきを生じさせないようにするため、警察署や警察本部がパトカー等の運用について連携を強化している。

注1:平時における警察の体制を前提として都道府県警察が行う、事件・事故に即応した初動的な警察活動であり、その指揮に当たる通信指令を含むもの
 2:警察官の職務執行を取り巻く環境の悪化等を受け、その影響が最も懸念される地域警察部門を中心として精強な第一線警察を構築するため、都道府県警察において策定しているもので、同プランに基づき、都道府県警察において各種施策を推進している((4)精強な第一線警察の構築 参照)。

 
図1-36 初動警察刷新強化の取組み
図1-36 初動警察刷新強化の取組み

(4)パトカー及び警察用航空機・船舶の活動
 全国の警察本部や警察署に配備されたパトカーは、交番・駐在所の地域警察官と連携して管内のパトロールを行うとともに、事件、事故等の発生時における初動措置をとっている。また、パトカー以外にも、全国に警察用航空機(ヘリコプター)が約80機、警察用船舶が約190隻配備されており、通信指令室やパトカーと連携し、その機動力をいかしたパトロール、事件・事故発生時の情報の収集、交通情報の収集、災害や山岳遭難等の事故発生時の捜索救助活動等を行っている。
 
パトカー
写真 パトカー
 
警察用航空機
写真 警察用航空機

事例
 平成20年8月、北アルプス輝山(岐阜県高山市)において、登山者7人が下山中に道を見失い遭難し、うち1人が落石により負傷した。岐阜県警察航空隊は、ヘリコプターを出動させ、捜索活動を行ったところ、7人全員を発見救助した(岐阜)。

(5)鉄道警察隊の活動
 鉄道警察隊は、列車内、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行い、すり、置き引き、痴漢等の犯罪の予防及び検挙を図っている。また、駅構内に置かれている本隊や分駐隊において、痴漢の被害に遭った女性から相談を受理した場合は、女性に同行して警乗を行うなどしている。
 
鉄道警察隊
写真 鉄道警察隊

事例
 平成20年4月、登校途中の電車内において、スカート内をカメラ機能付き携帯電話で撮影される被害に遭った女子高校生が、両親と共に鉄道警察隊の「女性被害相談所」を訪れ、同隊に相談し、同月、私服の鉄道警察隊員が同高校生に同行して電車に乗り込み、周囲を警戒していたところ、同高校生のスカート内をカメラ機能付き携帯電話で撮影している男(28)を発見し、迷惑防止条例違反(粗暴行為)で現行犯逮捕した(宮城)。

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

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