第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動
第1節 犯罪情勢とその対策
1 刑法犯
(1)刑法犯の認知・検挙状況
刑法犯の認知件数は、平成8年から14年にかけて戦後最多の記録を更新し続け、14年には285万件を突破した。その後、15年から減少に転じ、20年中は181万8,023件と、前年より9万813件(4.8%)減少した。しかし、減少したとはいえ、120万件前後で推移していた昭和40年代を大きく超える水準にあることに変わりなく、情勢は依然として厳しい。
刑法犯の検挙件数は、15年から19年にかけて60万件台で推移していたが、20年中は57万3,392件と、前年より3万1,966件(5.3%)減少した。
刑法犯の検挙人員は、9年以降30万人台で推移しており、13年から16年にかけて増加を続けていたが、17年から減少に転じ、20年中は33万9,752人と、前年より2万5,825人(7.1%)減少した。
刑法犯の検挙率は、昭和期にはおおむね60%前後の水準であったが、平成に入ってから急激に低下し、13年には19.8%と戦後最低を記録した。その後、14年から19年にかけて上昇を続けていたが、20年中は31.5%と、前年より0.2ポイント低下した。
図1-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和21~平成20年)
表1-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
(2)刑法犯の被害状況
平成20年中の刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数は3万6,153人と、前年より2,869人(7.4%)減少したが、死亡した者の数は1,211人と、前年より77人(6.8%)増加した。
20年中の財産犯の被害額(注)は約2,246億6,200万円と、前年より約39億3,200万円(1.7%)減少した。
図1-2 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成元~20年)
図1-3 財産犯の被害額の推移(平成元~20年)
(3)重要犯罪の認知・検挙状況
重要犯罪(注)の認知件数は、平成11年から15年にかけて、強盗と強制わいせつを中心に急激に増加したが、16年から減少に転じ、20年中は1万5,847件と、前年より1,075件(6.4%)減少した。
重要犯罪の検挙件数及び検挙人員は、増加傾向にあったが、16年から減少に転じ、20年中はいずれも前年より減少した。重要犯罪の検挙率は、11年から14年にかけて急激に低下したが、15年以降上昇を続け、20年中は62.6%となった。
図1-4 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔1〕 殺人
殺人の認知件数は、16年以降減少を続け、19年には戦後最低となったが、20年中は1,297件と、前年より98件(8.2%)増加した。また、20年中の検挙件数及び検挙人員も前年より増加した。20年中の検挙率は95.4%と、前年より1.1ポイント低下したが、他の重要犯罪の罪種に比べ高い水準を維持している。
図1-5 殺人の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔2〕 強盗
強盗の認知件数、検挙件数及び検挙人員は、8年から15年にかけて増加を続けていたが、16年から減少に転じ、20年中も前年より減少した。20年中の検挙率は61.1%と、前年と同率であった。
図1-6 強盗の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔3〕 放火
20年中の放火の認知件数、検挙件数及び検挙人員は、いずれも前年より減少した。20年中の検挙率は74.0%と、前年より0.3ポイント上昇した。
図1-7 放火の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔4〕 強姦
強姦の認知件数は、9年から15年にかけて増加傾向にあったが、16年から減少に転じ、20年中も前年より減少した。また、20年中の検挙件数及び検挙人員も前年より減少した。検挙率は15年以降上昇を続け、20年中は83.8%と、前年より4.9ポイント上昇した。
図1-8 強姦の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔5〕 略取誘拐・人身売買
20年中の略取誘拐・人身売買の認知件数、検挙件数及び検挙人員は、いずれも前年より減少した。20年中の検挙率は91.0%と、前年より5.0ポイント上昇した。
図1-9 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成11~20年)
〔6〕 強制わいせつ
強制わいせつの認知件数は、11年から15年にかけて増加していたが、16年から減少に転じ、20年中も前年より減少した。また、20年中の検挙件数は前年より増加し、検挙人員は前年より減少した。検挙率は15年以降上昇を続け、20年中は50.0%と、前年より3.8ポイント上昇した。
図1-10 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成11~20年)