第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

3 少年保護対策

(1)少年の福祉を害する犯罪

 警察では、児童に淫行をさせる行為のように、少年の心身に有害な影響を与え少年の福祉を害する犯罪(福祉犯)の取締りと被害少年の発見・保護を推進している。特に、児童買春や児童ポルノについては、児童買春・児童ポルノ法を積極的に適用し、取締りを強化している。
 また、日本国民が国外で犯した児童買春、児童ポルノ事犯等の取締りや国際捜査協力を強化するため、警察庁では、平成18年11月、東南アジア4か国の捜査関係者、非政府組織(NGO)関係者等を招いて、児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナーを開催し、各国の児童買春等の状況や取組みについて意見交換を行った。
 
 図1-64 福祉犯の法令別検挙人員(平成18年)
図1-64 福祉犯の法令別検挙人員(平成18年)
 
 表1-27 福祉犯の被害少年の学職別状況
表1-27 福祉犯の被害少年の学職別状況
 
 表1-28 児童買春・児童ポルノ法による検挙状況
表1-28 児童買春・児童ポルノ法による検挙状況

(2)暴力団等の影響の排除

 警察では、暴力団やその周辺者が関与する福祉犯等の取締りを積極的に行うとともに、補導活動や少年事件の取扱いを通じて少年の暴力団等への加入状況の把握に努め、暴力団等からの離脱促進や新たな少年の暴力団等への加入阻止のための対策を推進している。

(3)児童虐待対策

 平成18年中の児童虐待事件の検挙件数は297件(前年比33.8%増)と、最近5年間で1.7倍に増加した。
 児童虐待の早期発見と被害児童の早期保護は、児童の生命、身体の保護という警察の責務であることから、警察では、児童相談所、学校、医療機関等の関係機関との緊密な連携を保ちながら、児童の生命、身体の保護のための措置を積極的に講ずることとしている。
 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、速やかに児童相談所等に通告するほか、厳正な捜査や被害児童の支援等、警察としてできる限りの措置を講ずるなど、児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応の徹底を図っている。また、児童の保護に向けて、個別事案についての情報を入手した早期の段階から、関係者間で情報を共有し、対応の検討が行えるよう、児童相談所等関係機関との連携の強化を図っている。
 
 図1-65 児童虐待事件の態様別検挙状況(平成14~18年)
図1-65 児童虐待事件の態様別検挙状況(平成14~18年)

事例1
 無職の男(25)及び無職の女(28)は、18年2月、長男が言うことを聞かないことに憤慨し、しつけと称し殴る蹴るなどの暴行を加え、さらに冷水を張った浴槽にこの長男を入れたまま放置した。この長男は、病院に搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。同月、傷害罪で逮捕した(群馬)。

事例2
 会社員の男(24)及び無職の女(23)は、18年5月、長男を軽自動車の後部座席に放置したまま、午前9時ころから午後2時ころにかけて、車を離れてパチスロ等に興じ、この長男を熱中症で死亡させた。同月、保護責任者遺棄致死罪で逮捕した(愛知)。


コラム4 いじめによる被害対策

 警察では、いじめの被害を受けた少年に対して、保護者及び関係機関・団体との連携を図りつつ、被害少年の性格、環境、被害の原因や程度等に応じて、少年補導職員によるカウンセリングの継続的な実施等の支援を行っている。また、少年相談窓口について、電話、ファックス、電子メール等様々な形で相談できる体制を整えるとともに、夜間、休日における対応の強化にも努め、いじめの被害を受けた少年等が相談しやすい環境の整備を進めている。


(4)有害環境浄化活動

 警察では、インターネット上の違法・有害情報に少年が触れることのないようにするため、啓発活動等様々な取組みを実施しているほか、性や暴力等に関する過激な情報を内容とするコンピュータソフト、ビデオ、雑誌等に関して、関係業界による自主的な措置が講じられるように働き掛けを行うとともに、悪質な業者に対する指導、取締りに努めている。また、未成年者が酒類やたばこを容易に入手できないようにするため、同様の対応をとっている。


コラム5 バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会

 警察庁では、平成18年4月から、有識者等から成る「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」を開催し、いわゆるバーチャル社会が子どもにもたらす弊害やその対策の現状及び問題点、今後の取組みの強化に向けた方向性等について検討し、同年12月、最終報告書を取りまとめた。現在、警察庁においては、総務省、文部科学省を始めとする関係省庁と共に、事業者、教育関係者等に対し、それぞれの立場での取組みを要請するなど、この報告書に沿った取組みを進めている。
 
 図1-66 取組みの強化のための対策の方向性(最終報告書より)
図1-66 取組みの強化のための対策の方向性(最終報告書より)


(5)少年の犯罪被害への対応

 平成18年中の少年が被害者となった刑法犯の認知件数は30万9,104件であり、このうち凶悪犯は1,462件、粗暴犯は1万6,784件であった。
 警察では、被害少年に対して、継続的にカウンセリングを行うなどの支援を行っている。また、大学の研究者、精神科医、臨床心理士等部外の専門家を被害少年カウンセリングアドバイザーとして委嘱し、支援を担当する職員が専門的な助言を受けることができるようにしている。
 
 図1-67 被害少年の支援活動
図1-67 被害少年の支援活動

 第4節 少年の非行防止と健全育成

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