第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

9 ヤミ金融事犯、悪質商法等

(1)ヤミ金融事犯

 平成18年中のヤミ金融事犯(注1)の検挙事件数等は表1-3のとおりであり、このうち、暴力団が関与する事件は31.6%であった。

注1:出資法違反(高金利)事件及び貸金業規制法違反事件並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等の事件

 
 表1-3 金融事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-3 金融事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)

 最近のヤミ金融事犯は、多重債務者名簿等を利用して融資を勧誘したり、取立てにおいて他人名義や架空名義の携帯電話や預貯金口座を利用するなど、手口が巧妙化している。
 多重債務問題が大きな社会問題となっている状況を踏まえ、18年12月、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)等の改正が行われ、罰則の強化を内容とする一部の規定が19年1月20日から施行された。
 これを受け、警察では、悪質な違反行為に重点を置いた捜査の推進、新たな形態の違法事案への対応等の対策の強化を行っている。
 
 被害防止用リーフレット作成:(社)全国消費生活相談員協会
被害防止用リーフレット作成:(社)全国消費生活相談員協会

事 例
 無登録貸金業者(33)ら28人は、15年3月から18年2月にかけて、多重債務者名簿等を基に携帯電話やダイレクトメールで融資を勧誘し、融資に成功した顧客情報を店舗間で回し合うなど組織的に融資を繰り返し、約5万人に法定金利の20倍から350倍程度の高金利で約10億円を貸し付けるなどしたほか、完済した顧客に対して、取立てと称し、恐喝を行った。18年5月までに、貸金業規制法違反(無登録営業)、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反(高金利)、恐喝罪等で逮捕した(大阪、埼玉、山梨、和歌山、長崎、沖縄)。

(2)悪質商法

〔1〕 資産形成事犯
 平成18年中の資産形成事犯(注2)の検挙状況は表1-4のとおりであり、外国為替証拠金取引を仮装して多額の出資を募った出資法違反や未公開株の取引に絡んだ証券取引法違反等が発生した。

注2:資産形成の各種取引に係る出資法、証券取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯

 
 表1-4 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-4 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)

事例1
 会社経営者(59)ら3人は、17年1月から同年7月にかけて、法定の除外理由がないにもかかわらず、外国為替証拠金取引を装い、不特定かつ多数の相手方から元本を保証した上で、月利5%の割合で金利を払うことを約し、2,400万円を振込入金させ、業として預り金をした。18年11月までに、出資法違反(預り金の禁止)で逮捕した(宮崎、鹿児島)。

〔2〕 特定商取引等に係る事犯
 18年中の特定商取引等に係る事犯の検挙状況は表1-5のとおりであり、高齢者宅等を訪問して、床下や屋根等の点検を口実に不要なリフォーム工事を高額で行う「点検商法」や、通行中の若者を対象としてアンケート調査等を口実に高額な商品を売りつける「キャッチセールス」が目立った。
 
 表1-5 特定商取引等に係る事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-5 特定商取引等に係る事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)
 
 悪質商法に関する広報啓発パンフレット
悪質商法に関する広報啓発パンフレット

事例2
 家屋修繕等訪問販売会社経営者(41)ら11人は、17年2月ころ、経営する会社の業務に関し、訪問販売に係る小屋裏補強工事等の請負契約の締結について勧誘する際に、虚偽の事実を告げて顧客に請負契約を締結させた上、その代金支払と称し、130万円を振込入金させ、詐取した。18年11月までに、特定商取引に関する法律違反(不実告知)及び詐欺罪で逮捕した(京都、埼玉)。

(3)その他の経済事犯

 平成18年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙事件数は45事件、検挙人員は81人で、検挙した事件の主な適用法令は、建築基準法及び建築士法であった。
 また、同年中の国際経済事犯の検挙事件数は3事件、検挙人員は16人であった。

事 例
 建築士(48)は、16年5月ころから17年2月ころにかけて、マンションやホテルの建物につき、建築基準法施行令で定める基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有しないにもかかわらずこれを有するとした内容の虚偽の構造計算書を作成した。18年6月までに、建築基準法違反(安全基準不適合)及び建築士法違反(無資格工事監理の幇助)で検挙した。
 また、本件に関連して、当該マンション等の建築や販売等に関与した関係者10人を詐欺罪、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪、建設業法違反(建設業の許可の不正取得等)及び建築士法違反(無資格工事監理)で検挙した(警視庁、千葉、神奈川)。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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