第6章 公安委員会制度と警察活動の支え 

6 管区警察局の活動

(1)管区警察局の役割
 警察庁には、その地方機関として、東北、関東、中部、近畿、中国、四国及び九州の7つの管区警察局が設置されている。管区警察局は、警察庁が所掌する多岐にわたる事務を能率的に処理することができるよう設置されているものであり、警察庁の事務の一部を分担して所掌し、管内の府県警察の事務の調整、支援等を行っている。
 東京都と北海道の区域は、管区警察局の管轄外とされ、広域事案の処理等において必要がある場合には、警察庁の内部部局が直接に指揮監督等を行うこととされている。また、これらには、国の地方機関として、東京都警察情報通信部と北海道警察情報通信部が置かれている。

(2)管区警察局の主な業務
〔1〕 府県警察に対する監察
 年度ごとの監察実施計画に基づく監察のほか、随時の監察を実施し、警察事務の能率的な運営及び規律の保持に努めている。管区警察局の監察機能は、平成12年以降の警察改革の一環として強化されたものであり、各管区警察局に総務監察部(関東管区警察局は監察部。四国管区警察局は総務監察・広域調整部)が設置されている。17年度中、各管区警察局が実施した府県警察に対する監察の回数は1,177回であった。

〔2〕 広域調整
 組織犯罪対策や来日外国人犯罪対策、広域的な対処を必要とする重要事件の合同捜査・共同捜査等に関して、府県警察に対する指導・調整を行っている。また、悪天候時の高速道路の交通規制、飲酒検問や初日の出暴走対策等の一斉取締りの調整を行うなど、府県をまたがる交通管理・交通対策の斉一性を確保している。

事例1
 関東管区警察局は、来日外国人組織犯罪対策として、管区内10県警察を指導・調整し、東京入国管理局等と連携した不法滞在者の取締りを推進した。その結果、17年中に、茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡の各県警察は、出入国管理及び難民認定法違反等で4,377人を検挙した。

事例2
 中部管区警察局は、17年中、事件捜査を指揮する幹部を集めて「管区内盗犯捜査実戦塾」等を開催し、広域犯罪や組織犯罪等の事件指揮について指導するとともに、管区内各県警察の連携の強化を図った。

〔3〕 大規模災害への対応
 大規模災害の発生等緊急事態の時には、被災情報の収集・分析に当たるとともに、機動警察通信隊や管区警察局ごとに編成される広域緊急援助隊の派遣に関する調整を行っている。
 
 JR西日本福知山線列車事故の被災者の救助に当たる広域緊急援助隊員
写真 JR西日本福知山線列車事故の被災者への救助に当たる広域緊急援助隊員

 
 倒壊家屋からの救出救助訓練を行う広域緊急援助隊員
写真 倒壊家屋からの救出救助訓練を行う広域緊急援助隊員

事例3
 東北管区警察局は、18年1月、青森・岩手・宮城・福島の各県警察と共に、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定した被害の全体像の迅速な把握、情報の伝達等の訓練を実施した。

〔4〕 警察の情報通信
 管区警察局には、情報通信部とその下部機関の各府県情報通信部が設置され、警察庁や都道府県警察を結ぶ情報通信網の整備・管理等に当たっている。また、管区警察局情報通信部に、サイバーフォースと呼ばれる技術部隊を設け、サイバーテロの未然防止、被害拡大防止に資する活動を行っている(第1章第2節(3)(38頁)参照)。

〔5〕 捜査支援
 近年増加しているインターネット等を利用したサイバー犯罪に対処するため、管区警察局及び府県情報通信部の職員が府県警察の行う捜索差押、検証等の現場に臨場して、内部に記憶されている電磁的記録の破壊を防ぐとともに、証拠としての価値が失われないようコンピュータの設定や接続の状況を確認し、証拠となる電磁的記録を取り出すなどの技術的な支援を行い、都道府県警察の犯罪捜査を支えている。

〔6〕 教育訓練
 各管区警察局に附置された管区警察学校では、主として警部補及び巡査部長の階級にある府県警察の職員を対象とした昇任時教育、専門的教育等を実施している。
 
現場対応訓練
写真 現場対応訓練

 6 管区警察局の活動

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