第5章 公安の維持と災害対策

11 災害対策

(1)自然災害と警察活動
 平成17年中の台風、大雨、強風、高潮又は地震による被害は、死者が44人(前年比221人減)、行方不明者が1人(前年比10人減)、負傷者が1,543人(前年比6,232人減)、全壊又は半壊した住家数が5,335戸(前年比2万8,114戸減)、流失した住家数が1戸(前年比19戸減)、浸水した住家数が2万6,113戸(前年比14万1,600戸減)、損壊した道路が2,253か所(前年比9,463か所減)、崩れた山崖が1,458か所(前年比5,501か所)であった。
 
 表5-6 過去5年間の台風、大雨、強風、高潮、地震又は津波による死者、行方不明者又は負傷者の数(平成13~17年。18年4月30日現在)
表5-6 過去5年間の台風、大雨、強風、高潮、地震又は津波による死者、行方不明者又は負傷者の数(平成13~17年。18年4月30日現在)
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〔1〕 地震
 17年中は、福岡県西方沖を震源とするマグニチュード7.0の地震、千葉県北西部を震源とするマグニチュード6.0の地震、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.2の地震等が発生し、これらによる被害は、死者が1人、負傷者が1,265人等であった。
 関係都道県警察では、これらの地震の発生に伴い、災害警備本部等を設置して、所要の災害警備活動を実施した。警察庁では、災害警備本部を設置するなどして、必要な措置を講じた。
 特に、3月20日に発生した福岡県西方沖を震源とする地震では、福岡、佐賀の両県で、死者1人、負傷者1,017人等の被害が発生した。広島・山口・熊本の各県警察は、福岡県公安委員会からの援助の要求を受け、延べ約140人の広域緊急援助隊を福岡県に、長崎県警察は、佐賀県公安委員会からの援助の要求を受け、延べ約40人の広域緊急援助隊を佐賀県に、それぞれ派遣した。

〔2〕 台風
 17年中は23個の台風が発生し、うち日本に3個が上陸、12個が接近した。これらの台風による被害は、死者が30人、行方不明者が1人、負傷者が213人等であった。
 関係都道府県警察では、それぞれの台風の上陸等に伴い、災害警備本部等を設置して、災害警備活動を実施した。警察庁では、災害警備連絡室を設置するなどして、必要な措置を講じた。
 特に、台風第14号の上陸では、宮崎県で死者・行方不明者13人等の被害が発生した。福岡県警察は、宮崎県公安委員会から援助の要求を受け、17年9月7日と8日の両日、延べ約80人の広域緊急援助隊を宮崎県に派遣した。

(2)事故災害と警察活動
〔1〕 JR西日本福知山線列車事故
 平成17年4月25日午前9時18分ころ、兵庫県尼崎市のJR西日本福知山線において、7両編成の快速列車が急曲線区間を通過する際に前5両が脱線、うち前2両が列車進行方向左側のマンション1階部分に衝突し、死者107人、負傷者555人等の被害が発生した。
 
 事故現場で活動する特別救助班
写真 事故現場で活動する特別救助班

 兵庫県警察では、同県警察本部長を長とする突発重大事案対策本部を設置して、所要の救出救助活動等を実施した。警察庁では、直ちに、警備課長を長とする警備連絡室を設置し、同日中に警備局長を長とする対策本部を設置した。事故発生に伴い、大阪・京都・滋賀・奈良・和歌山の各府県警察は、兵庫県公安委員会から援助の要求を受け、延べ約170人の広域緊急援助隊を兵庫県に派遣した。
 広域緊急援助隊は、車両が複雑にマンションに食い込む困難な状況の中、マンションの崩落を防ぎながら車両を切断するなどして、救出救助に当たった。

〔2〕 JR東日本羽越線(特急)列車事故
 17年12月25日午後7時14分ころ、山形県東田川郡庄内町のJR東日本羽越本線において、6両編成の特急列車「いなほ14号」のすべての車両が脱線、うち前3両が横転、先頭車両がたい肥小屋に衝突し、死者5人、負傷者32人等の被害が発生した。
 山形県警察では、同県警察本部長を長とする突発重大事案対策本部を設置して、所要の救出救助活動等を実施した。警察庁では、同日直ちに警備課長を長とする警備連絡室を設置した。事故発生に伴い、宮城県警察は、山形県公安委員会から援助の要求を受け、延べ60人の広域緊急援助隊を山形県に派遣した。
 広域緊急援助隊は、猛烈な吹雪の中、折れ曲がった先頭車両に入り込んだ雪とたい肥を、手でかき出して、救出救助に当たった。
 
 事故現場で活動する特別救助班
写真 事故現場で活動する特別救助班

(3)広域緊急援助隊の強化
 警察庁では、平成16年10月に発生した新潟県中越地震の教訓を踏まえ、17年4月、12都道府県警察の広域緊急援助隊に、極めて高度な救出救助能力を持つ特別救助班(P-REX)(注)を設置した。特別救助班は、日々実践的な訓練を行い、17年中は、上記列車事故のほか、台風第14号に伴う土砂災害等に出動し、被災者の救出救助等に当たった。
 また、18年3月、各都道府県警察の広域緊急援助隊に刑事部隊を新たに設置し、迅速かつ的確な検視や遺族等への遺体の引渡し、安否情報の提供を実施できるよう体制を整備した。

注:Police Teamof Rescue Experts


 
 図5-8 特別救助班(P-REX)の設置
図5-8 特別救助班(P-REX)の設置

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