第5章 公安の維持と災害対策

5 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向
〔1〕 教団の危険性と「原点回帰」の教団運営
 オウム真理教(以下「教団」という。)は、依然として麻原彰晃こと松本智津夫被告を「尊師」として位置付け、絶対的帰依の対象としているほか、殺人を暗示的に勧める危険な教義を保持し、松本サリン事件及び地下鉄サリン事件を正当化する指導を行うなど、いまだに治安に対する危険性を具備している。
 また、教団は平成17年に入ってからは、松本の説法を収録した書籍を相次いで発行し、これを教学する修行月間を連続して設定したり、松本への絶対的帰依・服従を指導したりするなど、松本及び松本の説く教義を絶対視する「原点回帰」の姿勢を鮮明にしている。
 一方、こうした「原点回帰」の教団運営を進める執行部に対し、同方針に批判的な観点を持つ派閥との間で対立もみられる。
 
 図5-3 オウム真理教の拠点施設等
図5-3 オウム真理教の拠点施設等

〔2〕 観察処分の期間更新の決定
 教団は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、15年2月から3年間、公安調査庁長官の観察に付されていた。同長官は、警察庁長官の意見を聴いた上、17年11月、公安審査委員会に対し、観察処分の期間更新を請求した。請求を受けた公安審査委員会は、18年1月、教団の危険性を認定し、観察処分の期間を3年間更新する決定を行った。なお、今回の更新決定は、15年1月に続き、2回目である。

〔3〕 松本を被告とする裁判の動向
 地下鉄サリン事件等13事件の首謀者として殺人等の罪に問われた松本は、16年2月27日、東京地方裁判所で死刑判決を受けた。その後、松本の弁護団は、東京高等裁判所に控訴したが、松本の訴訟能力の有無について争う一方で、期限内の17年8月までに控訴趣意書を同裁判所に提出しなかったため、審理が停止していた。こうした中、18年2月、松本の精神鑑定の嘱託を受けた鑑定医が「松本被告は、裁判を続けられる状態にある」との鑑定結果を提出したことを踏まえ、同年3月、同裁判所は、控訴趣意書の未提出を理由に控訴を棄却する決定をした。同月、松本の弁護団は、同裁判所に控訴棄却の決定に対する異議申立てを行ったが、同年5月、同裁判所は申立てを棄却した。これを受け、同年6月、松本の弁護団は最高裁判所に特別抗告を行った。これが棄却された場合、死刑が確定することから、同人をめぐる裁判は、今後、重大な局面を迎える可能性がある。

(2)オウム真理教対策の推進
〔1〕 特別手配被疑者の追跡捜査と組織的違法行為の厳正な取締り
 警察は、依然として逃走中である警察庁指定特別手配被疑者の平田信、高橋克也及び菊地直子の3人の発見検挙を最優先の課題として、広く国民の協力を得ながら、全国警察を挙げた追跡捜査を推進している。
 また、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進し、平成17年中は、職業安定法違反で8人を検挙するとともに、2都県で延べ22か所の教団施設等を捜索し、関係資料約1,600点を押収した。
 
【オウム真理教関係特別手配被疑者】
写真 オウム真理教関係特別手配被疑者
  平田信

写真 オウム真理教関係特別手配被疑者
  高橋克也

写真 オウム真理教関係特別手配被疑者
  菊地直子


〔2〕 教団の実態解明と施設周辺の警戒警備活動
 警察は、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、教団施設周辺の住民や関係自治体による要望を踏まえ、住民の平穏な生活を守るため、施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を実施している。また、警察としては、オウム真理教対策関係省庁連絡会議に参画し、関係省庁との連携を強化している。

 5 オウム真理教の動向と対策

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