第4章 安全かつ快適な交通の確保

11 交通事故事件捜査

(1)交通事故事件の検挙状況
 平成17年中、交通事故に係る業務上(重)過失致死傷事件の検挙件数は85万5,644件(前年比8,925件(1.0%)減)、危険運転致死傷罪の検挙件数は279件(前年比9件(3.3%)増)であった。また、警察が認知した物件事故の発生件数は、約314万件であった。
 
 表4-6 業務上(重)過失致死傷事件の検挙状況(件)(平成17年)
表4-6 業務上(重)過失致死傷事件の検挙状況(件)(平成17年)
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 表4-7 危険運転致死傷罪の検挙状況(件)(平成17年)
表4-7 危険運転致死傷罪の検挙状況(件)(平成17年)
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(2)適正な交通事故事件捜査の推進
 警視庁及び各道府県警察本部の交通捜査担当課に事故捜査指導官等を配置し、警察署が取り扱う事故事件のうち、原因の究明が困難なものについて、実地に指導を行うなど、組織的な捜査により、適正な交通事故事件捜査の推進に努めている。
 特に、一方の当事者が死亡し、重体であることなどから事情聴取ができない事故や、当事者の言い分が食い違う事故については、初期の段階から組織的な捜査を推進し、目撃者や物証の確保等に努めている。
 また、ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を行うとともに、現場こん跡画像検索システム(注)等の交通鑑識資機材を効果的に活用し、被疑者の早期検挙に努めており、平成17年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は97.6%に達している。

注:ひき逃げ事件の現場に遺留されたレンズ片やタイヤのこん跡から、車種等を絞り込むシステム


 
 交通事故の捜査
写真 交通事故の捜査

事例1
 17年2月に発生した死亡ひき逃げ事件について、発生から8時間後に被疑者が警察署に出頭してきたため、業務上過失致死罪及び道路交通法違反(救護措置義務違反)で逮捕した。逮捕後、この被疑者について呼気検査を行ったものの、呼気中から少量のアルコール分しか検出されなかったが、この被疑者が事故発生時身体に保有していたと思われるアルコールの濃度の推定や、参考人の供述等から、事故発生時、この被疑者はアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったことを立証し、危険運転致死傷罪で検挙した(千葉)。

事例2
 17年5月、高校生の列に飲酒運転の普通乗用車が突っ込み、3人が死亡し、22人が重軽傷を負った交通事故について、参考人の供述等から、事故発生時、この普通乗用車の運転者が、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったことを立証し、危険運転致死傷罪で検挙した(宮城)。

(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化
 ち密で科学的な交通事故事件捜査を求める国民の声を踏まえ、高度な知識及び技能を有する交通捜査員を養成するため、衝突実験に基づく事故解析等の専門的教養を行う交通事故鑑定専科を開催している。
 また、事故当事者の負担軽減や迅速な事故処理による交通渋滞の早期解消を図るため、交通事故自動記録装置等の各種捜査支援システムや、一定の軽微な物件事故の現場見分を省略する制度を活用している。

コラム1 交通事故自動記録装置の概要

 センサー部(ビデオカメラ、マイク)及び制御機(音源識別部、画像メモリー、VTR)から構成され、交差点内で交通事故が発生すると、衝突音やスリップ音を感知して、その前後の状況(車両の走行状況、信号の表示等)を自動的にVTRに記録する装置である。
 この装置により、客観的な資料に基づいて交通事故の状況を早期に把握することが可能になり、また、事故当事者の現場立会い時間の短縮や事故に伴う交通渋滞の解消が図られている。
 
交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真
写真 交通事故自動記録装置による撮影画像の連続写真

事例
 平成16年12月、普通乗用車と接触して転倒した歩行者を後続の普通乗用車がひいて逃走した交通事故について、後続の普通乗用車の運転者は事故の事実を否認したが、交通事故自動記録装置に記録された映像から、路上に転倒している被害者を普通乗用車がひいたことが判明した(北海道)。

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