第3章 組織犯罪対策 

5 総合的な銃器対策

 過去10年間に我が国で押収されたけん銃は約9,300丁である。最近、けん銃の押収丁数は減少傾向にあるが、これは、暴力団等の犯罪組織が隠匿や密輸・密売の方法をますます潜在化・巧妙化させているからであると考えられる。このため、犯罪組織の武器庫の摘発や密輸・密売事件等の摘発に重点を置いた取締りを行うなど、総合的な銃器対策を推進している。

(1)銃器の摘発
〔1〕 けん銃の押収状況
 平成17年中のけん銃押収丁数は489丁と、前年より112丁(18.6%)減少した。このうち暴力団構成員及び準構成員からの押収丁数は243丁と、全押収丁数の49.7%を占めた。
 
 図3-10 けん銃押収丁数の推移(平成8~17年)
図3-10 けん銃押収丁数の推移(平成8~17年)
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 暴力団構成員等から押収したけん銃等
写真 暴力団構成員等から押収したけん銃等
写真 暴力団構成員等から押収したけん銃等

〔2〕 武器庫事件の摘発状況
 17年中は、武器庫事件(組織管理に係る3丁以上のけん銃を押収した事件をいう。)を11件(前年同数)検挙し、けん銃等56丁(前年比7丁増)を押収した。摘発した武器庫は、すべて暴力団が組織的に管理していたものであった。武器庫1か所当たりのけん銃隠匿丁数は5.1丁であった。
 また、暴力団は、その構成員の親族が経営する会社事務所の押入、倉庫脇の草むら、貸倉庫内等様々な場所に隠匿しているほか、同一家屋内に分散させて隠匿するなど、その方法は一層巧妙化している。
 
 図3-11 武器庫事件の検挙状況の推移(平成8~17年)
図3-11 武器庫事件の検挙状況の推移(平成8~17年)
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事例1
 17年7月、太州会傘下組織幹部(58)が管理する倉庫を捜索したところ、倉庫脇の草むらに枯れ草をかけて隠匿されていたプラスチックケース内から、けん銃8丁、実包163個等を発見、押収した。同年10月までに、同人ら6人を銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)違反(所持)等で逮捕した(福岡)。

事例2
 17年7月、稲川会傘下組織構成員の交友者(35)宅を捜索したところ、押入内に置かれたスポーツバッグ及び小型金庫内から、けん銃6丁、実包197個等を発見、押収し、同人を銃刀法違反(所持)で逮捕した。その後の捜査の結果、同月、同人にけん銃の保管を指示した同組織幹部(34)も同法違反(共同所持)等で逮捕した(神奈川)。

事例3
 17年10月、共政会傘下組織構成員(32)宅を捜索したところ、天井裏からけん銃4丁及び実包50個を発見、押収し、同人を銃刀法違反(所持)で逮捕した。その後の捜査の結果、18年2月、同人にけん銃の保管を指示した同組織組長(56)を同法違反(共同所持)で逮捕した(広島)。

〔3〕 けん銃等密輸入事件の摘発状況
 17年中は、けん銃等密輸入事件3件(けん銃密輸入事件2件、けん銃部品密輸入事件1件)を検挙し、けん銃4丁を押収した。検挙したけん銃密輸入事件のうち1件は、暴力団幹部が首謀者となり組織的に敢行されたものであった。
 なお、検挙したけん銃等密輸入事件の仕出地は、フィリピン、中国及び米国であった。
 
 図3-12 けん銃等密輸入事件の検挙状況(平成8~17年)
図3-12 けん銃等密輸入事件の検挙状況(平成8~17年)
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 表3-17 仕出地別けん銃等密輸入事件検挙件数の推移(平成13~17年)
表3-17 仕出地別けん銃等密輸入事件検挙件数の推移(平成13~17年)
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事例4
 フィリピン人の税関職員(38)は、17年10月、成田国際空港において、フィリピンからけん銃3丁及び実包208個を隠匿して入国しようとした。同人及び同人を出迎えにきた自動車運転代行業の男(58)を銃刀法違反(密輸入)等で逮捕した。その後の捜査の結果、密輸入を指示した稲川会傘下組織幹部(52)を、同年11月、銃刀法違反(密輸入)等で逮捕した(千葉)。
 
 密輸入事件で押収したけん銃等
写真 密輸入事件で押収したけん銃等

(2)政府を挙げた諸対策の推進
 厳しい銃器情勢に対処するため、18年4月、内閣官房長官を長とする政府の銃器対策推進本部の副本部長に国家公安委員会委員長を加えるとともに、同年5月、同推進本部において、銃器摘発体制、関係機関間の連携及び水際対策等に関する施策を取りまとめた「平成18年度銃器対策推進計画」を策定し、これに基づき、政府を挙げた銃器対策に取り組んでいる。
 また、警察では、海・空港等の水際での銃器取締りを推進するため、税関、海上保安庁等と連携した取締りや訓練を実施したり、連絡協議会を開催したりしている。
 
 海上保安庁との合同訓練
写真 海上保安庁との合同訓練

(3)国際的な銃器対策の推進
 我が国は、平成14年12月、銃器議定書(注1)への署名を行った。同議定書を締結することで、国際的に不正取引された銃器の追跡調査が容易になり、国際協力が更に円滑になることが期待される。
 また、警察庁では、国際刑事警察機構(ICPO-Interpol)(注2)を通じるなどして、外国関係機関と積極的に情報交換を行っているほか、職員を派遣したり、関係者を招へいして国際会議を開催したりするなどして、外国関係機関との連携の強化に努めている。

注1:国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(本条約)を補足する三議定書の一つで、銃器、その部品及び弾薬の不正な製造及び取引を犯罪化するとともに、銃器への刻印、記録保管、輸出入管理等に関する制度を確立し、法執行機関間の協力関係を構築するための条約(18年3月末現在の署名国は52か国、締結国は49か国)
 2:International Criminal Police Organization-ICPO-Interpol


(4)国民の理解と協力の確保
 全国の都道府県警察に「けん銃110番」という電話窓口を設置して、国民からけん銃事犯にかかわる情報の提供を求めている。また、「銃器犯罪根絶の集い」(注3)等の催し物を開催したり、「ストップ・ガン・キャラバン隊」(注4)等の民間ボランティア団体と連携した活動を行ったりすることで、銃器犯罪の根絶と違法銃器の排除を広く国民に呼び掛けている。

注3:警察庁と都道府県銃器対策本部等が毎年度共催している催し物。7年10月に東京で第1回目が開催されて以降、東京2回、神奈川、福岡、大阪、広島、宮城、群馬、山梨、京都で各1回ずつ開催している。
 4:銃器犯罪の被害者の遺族や関係者、銃器問題に深い関心をもつ研究者等で構成するボランティア団体。9年4月に発足し、催し物や会合、ウェブサイト等を通じて、国民に銃器犯罪の悲惨さを訴え、違法銃器を根絶しようとする意識を高めている。


 
銃器犯罪根絶の集い
写真 銃器犯罪根絶の集い

 第3節 薬物銃器対策

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