第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

5 生活安全産業の育成と活用

(1)警備業の育成
 警備業の業務は、施設警備、雑踏警備、交通誘導警備、現金輸送警備、ボディガード等の幅広い分野に及び、住宅の機械警備も普及拡大するなど、警備業は、民間の生活安全サービスとして定着している。また、空港や原子力発電所のようなテロの標的とされやすい施設の警備も行われている。平成17年末現在の警備業者数は9,266業者、警備員数は481,794人に達している。
 警察では、警備業者に対する指導監督を行い、不適正な業務を行う業者に対しては行政処分を行うことで、警備業務の実施の適正化を図っている。また、同年11月から、警備員の知識及び能力を向上させ、警備業務の依頼者の保護を図ることを目的とする警備業法の一部を改正する法律が施行された。
 
 図2-34 警備業者・警備員数の推移(昭和60~平成17年)
図2-34 警備業者・警備員数の推移(昭和60~平成17年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)古物商・質屋を通じた盗品の流通防止と被害回復
 古物営業法及び質屋営業法では、古物商や質屋に盗品等が持ち込まれる蓋然性が高いことに着目し、事業者に取引の相手方の確認や不正品の疑いがある場合の申告、取引の記録等を義務付けている。また、都道府県公安委員会の承認を受けた団体は、警察から提供を受けた情報を基に、持ち込まれた商品が盗品等であるかどうかについて、古物商等から照会があった場合に回答している。
 これらにより、盗品等の市場への流入が阻止されるとともに、いったん流入した盗品等が発見されやすくなり、窃盗その他の犯罪の防止及びその被害の回復が図られている。警察では、犯罪情勢や取引実態に配意しつつ、その適正な施行に努めている。
 また、古物商や古物市場主の関係団体は、営業所又は古物市場の管理者に対して、古物が不正品であるかを判断できるようにするための講習を実施しており、警察では、講師の派遣等の協力を行っている。

(3)防犯設備関連業界との連携
 警察では、市場規模が年間1兆円を超える防犯設備関連市場において、より良質な防犯設備が供給されるよう、最新の犯罪情勢や手口の分析結果等を事業者に提供するなど、防犯設備の開発を支援している。
 また、(社)日本防犯設備協会が運用している総合防犯設備士と防犯設備士は、防犯設備の設計、施工、維持管理に関する専門的な知識・技能を有する専門家として活躍している。警察では、同協会に対し、防犯設備士等に対する研修を充実させるための支援を行っているほか、各都道府県ごとに防犯設備士等の団体を設立するよう働き掛けている。
 
 図2-35 防犯設備関連市場の推移(平成12~17年度)
図2-35 防犯設備関連市場の推移(平成12~17年度)
Excel形式のファイルはこちら

(4)調査業に係る業務の適正化
 探偵社、興信所等の調査業については、悪質な業者による不適正な営業活動が後を絶たないことから、警察では、悪質な調査業者の取締り等を行うことにより、調査業に係る業務の適正化に取り組んでいる。
 調査業のうち探偵業については、その業務の適正化を図り、個人の権利利益の保護に資することを目的として、探偵業の業務の適正化に関する法律が、平成18年6月、第164回国会において成立した。
 この法律の概要は、次のとおりである。
 ・ 暴力団員等一定の者は探偵業を営むことができないこと。
 ・ 探偵業を営もうとする者は、都道府県公安委員会に届け出なければならないこと。
 ・ 契約をする際は、依頼者に対し、法令の遵守、探偵業務の内容等の重要事項について、あらかじめ書面を交付して説明しなければならないこと。
 ・ 探偵業務を実施する際、調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならないこと。
 ・ 都道府県公安委員会は、探偵業者に対し、業務の状況に関する報告又は資料の提出を求め、また、営業所への立入検査等を実施できること。
 ・ 都道府県公安委員会は、探偵業者が法令に違反するなどした場合、当該探偵業者に対し、必要な指示をし、また、営業の停止等を命ずることができること。
 ・ 法律の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
 ・ 探偵業の営業の届出について、法律の施行の日から1か月間の猶予期間を設けること。

 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む