10 留置業務の管理運営 (1) 留置場の管理運営  平成17年4月1日現在、全国に留置場は1,286場設置されている。警察では、捜査業務と留置業務の分離を徹底しつつ、被留置者の人権に配慮した処遇及び施設の改善を推進しており、我が国が加盟している拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(拷問等禁止条約)の規定を踏まえ、次のとおり、国際的な評価にも耐える適正な留置業務の運営を徹底している。 ○ 人権に配意した適正な処遇  ・ 被留置者の健康を保持するため、月2回、健康診断を実施している。  ・ 外部の情報を入手できるようにするため、ラジオや日刊新聞紙を備え付けている。 ○ 女性被留置者の適正な処遇  ・ 女性の特性に配慮するため、処遇全般を女性警察官が担当する女性専用留置場を設置している。 ○ 外国人被留置者の適正な処遇  ・ 使用する言語の違いに配慮するため、母国語の音声と文字によって留置場内の処遇等を案内する機器を整備している。 ○ 留置場施設の改善・整備  ・ 被留置者のプライバシーを保護するため、留置場を横一列の「くし型」に配置し、前面に遮へい板を設置するなどの措置を講じている。  ・ 留置場内を快適にするため、便所の周囲を壁で囲うなど構造を改善したり、冷暖房装置を設置したりしている。  また、警察庁は、被留置者の処遇を全国的に斉一にするため、毎年すべての都道府県警察の留置場に対する巡回視察を実施している。 留置場の内部 女性専用留置場(被留置者は模擬) (2) 被留置者の収容状況  平成16年中の被留置者の年間延べ人員は約544万人(1日平均約1万4,900人)で、過去10年間で2.1倍に増加した。同期間中、外国人被留置者の年間延べ人員は3.1倍に増加しており、増加率が特に著しい。  被留置者延べ人員が増加した原因としては、犯罪情勢の悪化に伴い逮捕人員が増加したこと、犯罪の広域化、複雑・多様化や来日外国人犯罪の増加等により捜査が長期化し、それに伴い留置期間も長期化したこと、拘置所等行刑施設の収容人員が増加したことにより、これらへの移監が停滞していることが考えられる。  留置場の収容率(収容基準人員に対する被留置者の割合)は、17年5月20日現在、全国平均で82.4%に達している。特に大都市及びその周辺部を管轄する警察の状況は厳しく、茨城県警察が108.6%、愛知県警察が108.0%、警視庁が106.3%、大阪府警察が105.5%、静岡県警察が103.8%と著しく高率である。少年と成人、女性と男性を同室に留置できないなどの制約があることから、収容率が約7割から約8割に達した時点で実質的に収容力は限界に達しているのが通例であり、留置場の収容力不足は深刻である。  また、移監待機率(注)は、17年5月20日現在、全国平均で19.3%と高率になっている。中でも、山梨県警察が44.9%となっているなど、7の道県警察で30%を超えており、高収容率の一因となっていることがうかがえる。 注:被留置者数に占める拘置所等への移監を待っている者の割合。起訴されるなど捜査がおおむね終了した場合は、拘置所等行刑施設へ移監されるのが一般的である。 表7-4 被留置者延べ人員の推移(平成7~16年) (3) 留置場の収容力確保のための施策  留置場の過剰収容は、被留置者の処遇環境を悪化させるおそれがあるほか、円滑な捜査活動等を妨げるものである。このため、警察では、警察署の新築・増改築時に十分な規模の留置場を整備するとともに、被留置者を収容する専用施設の建設を推進し、収容力の確保を図っている。また、拘置所等行刑施設に対し、早期の移監を要請している。