第4節 来日外国人犯罪対策 1 来日外国人犯罪の情勢  社会経済の国際化や不法滞在者問題の悪化に伴って、来日外国人犯罪をめぐる情勢は厳しさを増している。こうした中、我が国に流入した外国人が犯罪集団を形成し、また、これらが我が国の暴力団や外国に本拠を置く国際犯罪組織(注)と連携して活動する動向がみられ、治安への重大な脅威となっている。 注:外国に本拠を置く犯罪組織、来日外国人犯罪組織その他の国際犯罪(外国人による犯罪、国民の外国における犯罪その他外国に係る犯罪をいう。)を行う多人数の集合体 (1) 全般的傾向  平成16年中の来日外国人による刑法犯及び特別法犯の検挙件数は47,128件、検挙人員は21,842人と、それぞれ前年より6,513件(16.0%)、1,835人(9.2%)増加し、いずれも過去最多であった。過去10年間で、検挙件数は1.9倍に、検挙人員は1.8倍に増加している。 図4-14 外国人入国者数及び来日外国人検挙状況の推移(平成7~16年)  16年中の来日外国人による窃盗犯の検挙件数、検挙人員は、いずれも過去最多であった。検挙件数の30.5%は侵入盗である。過去10年間で、侵入盗の検挙件数は3.4倍に、自動車盗の検挙件数は7.1倍に増加した。 図4-15 来日外国人窃盗犯検挙状況の推移(平成7~16年)  来日外国人による凶悪犯の検挙件数、検挙人員は、過去10年間でそれぞれ2.0倍、2.1倍に増加している。中でも、強盗の検挙件数は、過去10年間で2.6倍に増加した。また、強盗の検挙件数に占める侵入強盗の割合は、被疑者が日本人の場合は38.4%であるのに対し、被疑者が来日外国人の場合は57.2%と高くなっている。 図4-16 来日外国人凶悪犯検挙状況の推移(平成7~16年) 事例  16年1月に大阪市中央区で発生した中国人の集団同士の対立抗争事件で、中国人4人を監禁罪等で逮捕し、住居を捜索したところ、目出し帽や他人名義の預金通帳等が発見され、余罪があることが推察された。その後の捜査の結果、この4人が、15年12月に大阪府、奈良県、兵庫県で連続して4件発生した緊縛強盗致傷事件やスーパーマーケットを対象とした多額金庫破り事件の被疑者であることが明らかとなり、この4人のほか、15年の事件に関与した中国人2人と暴力団組員を含む日本人2人を強盗罪等で逮捕した(大阪、兵庫、奈良)。 (2) 全国への拡散  過去10年間の来日外国人による刑法犯検挙件数の増減率を発生地域別にみると、東京都の増加率はほぼ横ばいであるのに対し、北海道、関東地方(東京都を除く。)、中部地方、中国地方の増加率はいずれも2倍を上回っており、来日外国人による犯罪が全国に拡散していることがうかがえる。 図4-17 来日外国人刑法犯の発生地域別検挙件数の推移(平成7~16年) (3) 不法滞在者による犯罪  平成16年中の来日外国人犯罪の検挙人員2万1,842人のうち、不法滞在者(注)は1万2,310人と、56.4%を占めている。ただし、その多くは、不法滞在等の入管法違反による検挙人員である。入管法違反を始めとする特別法犯を除外し、刑法犯のみの検挙状況をみると、来日外国人の検挙人員8,898人のうち、不法滞在者は1,393人と、15.7%を占めるにとどまる。  ところが、刑法犯で検挙された来日外国人のうち、知能犯では41.0%(564人中231人)が、凶悪犯では38.0%(421人中160人)が不法滞在者である。また、安全な暮らしをおびやかし、国民に強い不安感を与える身近な犯罪への関与は更に顕著であり、侵入強盗の検挙人員の46.8%(201人中94人)、侵入窃盗の検挙人員の56.1%(565人中317人)、侵入窃盗で住居を対象としたものの検挙人員の59.5%(346人中206人)が不法滞在者であった。 注:入管法第3条違反の不法入国者、入国審査官から上陸の許可を受けないで本邦に上陸した不法上陸者及び適法に入国した後在留期間を経過して残留している者等の不法残留者 図4-18 来日外国人刑法犯の検挙人員に占める不法滞在者の割合(平成16年) 事例  16年2月、山形県米沢市で、埼玉県で窃取された普通乗用車に乗車していたロシア人の男3人を逮捕し、被疑者らが寝泊まりをしていた山形県の自動車解体会社を捜索したところ、別の盗難車両3台が発見されたため、これらを押収するとともに、解体業者ら3人(日本人1人、ロシア人2人)を盗品等保管罪で逮捕した。主犯格であったロシア人の男(26)は、15年11月、退去強制処分を受けていたが、別名により取得した旅券を使用して我が国に再び入国していた(山形)。 (4) 国籍・地域別検挙状況  平成16年中の来日外国人犯罪の検挙状況を国籍・地域別にみると、中国(台湾、香港等を除く。)が検挙件数(1万6,950件)、検挙人員(9,259人)共に際立って多く、過去10年間でそれぞれ2.1倍、2.5倍に増加した。また、検挙した来日外国人犯罪全体に占める割合は、それぞれ36.0%、42.4%となっている。