5 カード犯罪 (1) カード犯罪の認知・検挙状況  平成16年中のカード犯罪(注1)の認知件数は6,926件(前年比2,064件増)、検挙件数は4,248件(前年比1,035件増)、検挙人員は1,094人(前年比262人増)と、いずれも前年より大幅に増加した。 注1:クレジットカード、キャッシュカード、プリペイドカード及び消費者金融カードを悪用した犯罪 図3-11 カード犯罪の認知・検挙状況の推移(平成7~16年) (2) カード偽造事犯の手口  偽造カード作成用のプラスチック板(いわゆる生カード)の大半は外国で製造され、国際郵便等を利用して日本に持ち込まれる場合が多い。  いわゆる生カードに記録するデータは、客が使用したカードを店の従業員がスキミング(注2)する方法、カード加盟店に不法に侵入し、設置されているカードリーダーに特殊なICチップを取り付けて顧客のカードからデータを読み取る方法、外国でスキミングしたデータを購入する方法等により入手されている。 注2:真正なカードのデータを磁気情報読取装置(スキマー)を用いて取得する行為 押収した生カード 磁気情報読取装置(スキマー)  偽造したキャッシュカードを用いてATM等から預貯金を引き出す際には、暗証番号を入力する必要があるが、自動車運転免許証に記載された生年月日等から推知する手口、金融機関の従業員や警察官を装って聞き出す手口、被害者が利用する運動施設の関係者と共謀して暗証番号を推知する手口等がみられた。  また、中国人やマレーシア人により組織された国際犯罪組織が、我が国で行われるカード犯罪に関与している例がある。これらの組織は、いわゆる生カードの製造・入手、データの入手、偽造カードの作出・売買・使用といった局面ごとに役割を分担しているほか、カード使用時に偽造が発覚しやすいことから偽造カードの使用役には日本人を当てるなど、摘発を逃れるために様々な工作を行っている。 事例1  ゴルフ場の支配人を含む日本人の男9人と中国人の男2人は、ゴルフ場の利用客のキャッシュカードのデータをスキミングし、そのデータを利用して偽造したカードを使用して預貯金を引き出していた。このゴルフ場には、利用者自身が設定する番号を入力することにより解錠する貴重品用の金庫が設置されていたが、被疑者らは、金庫の設置場所にカメラを設置し、利用者が入力する番号を盗み見て、キャッシュカードの暗証番号を推知していた。平成17年1月、窃盗罪で逮捕した(警視庁、埼玉、千葉、神奈川、静岡)。 事例2  16年6月、マレーシア人の男(37)ら8人は、東京都内の電気量販店で、偽造クレジットカードを使用して、デジタルカメラ2台をだまし取った。同年8月までに、不正作出支払用カード電磁的記録供用罪及び詐欺罪で逮捕した。その後の捜査の結果、主犯格のマレーシア人の男は、偽造クレジットカードでだまし取った商品を換金した上、約550万円を他人の名義を使って本国のマレーシアへ送金していることが判明したため、同年12月、組織的な犯罪の処罰及び犯罪利益の規制等に関する法律違反で再逮捕した(警視庁)。 (3) カード犯罪対策  警察では、クレジットカード発行会社により構成される全国クレジットカード犯罪対策連絡協議会と、カード犯罪の発生状況や手口に関する情報を交換するとともに、クレジットカード加盟店等に捜査や不正使用対策への協力を呼び掛けている。  平成16年6月には、全国銀行協会に加盟する銀行の間で申合せが行われ、銀行が偽造キャッシュカードによる現金自動預払機(ATM)からの預貯金の引き出しを確認した場合には、速やかに警察署へ連絡した上で、被害届を提出することなどが確認された。  同年12月には、警察庁から全国銀行協会、全国クレジット産業協会等の関係団体に対し、ICチップを取り付けたカードの導入、バイオメトリクス(生体情報)を利用した本人確認の導入を図るほか、一度にATMから引き出せる額の上限を預金者が設定できるようにするなどの被害防止対策を積極的に推進するよう要請した。また、各銀行から利用者に対して、他人に推測されやすい暗証番号を使用しないように呼び掛けるよう要請した。