(2) 新しいシステムの導入
平成17年1月、警察庁、法務省及び財務省は共同で、航空会社の協力を得て、航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報とを入国前に照合することのできる「事前旅客情報システム(APIS)」を導入した。これにより、入国管理の厳正化と国際犯罪等に係る捜査・調査の効率化を図っている。
また、偽変造旅券の使用や他人へのなりすましによる不法入国等を防ぐためには、顔情報、虹彩、指紋等のバイオメトリクス(生体情報)を活用することが有効であることから、16年6月、犯罪対策閣僚会議の幹事会の下にワーキングチームが設置され、バイオメトリクスを活用した出入国管理に関する検討を進めている。
(3) 外国の捜査機関等との協力
警察庁では、国際犯罪捜査に関する情報交換や犯人の逮捕と引渡しを円滑に行うため、外国捜査機関や国際刑事警察機構(ICPO)との協力関係の強化を図っている。
特に、来日外国人犯罪の検挙者の多くが中国人であることから、中国との協力関係を強化している。両国は、共同で国際犯罪を摘発しているほか、国外犯の処罰規定を積極的に活用し、日本国内で犯罪を犯した後に帰国した中国人被疑者の捜査を協力して行っている。
また、平成16年11月には、東京で第1回東アジア地域組織犯罪対策会議が開催され、国際化する組織犯罪に対処するため、韓国、フィリピン、ロシア等の治安機関と組織犯罪に関する情報交換を行った。17年6月には、グレンイーグルズ・サミットの議長国である英国の主催により、英国のシェフィールドでG8司法・内務閣僚級会合が開催され、組織犯罪に関する様々なデータベースを各国が相互に活用する方策を検討することが合意された。
(4) 国外逃亡被疑者等の追跡
日本国内で犯罪を行い国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という。)の数は年々増加し、平成16年末現在で743人となっている。このうち外国人は590人で、79.4%を占める。国籍・地域別にみると、中国人が283人(38.1%)、次いで日本人が153人(20.6%)である。推定される逃亡先は、中国が138人(18.6%)と最も多く、次いでブラジルが47人(6.3%)、フィリピンが36人(4.8%)、韓国が34人(4.6%)となっている。また、出国年月日が判明している国外逃亡被疑者212人のうち、犯行当日に出国した者が8人、犯行翌日に出国した者が19人であるなど、犯行から10日以内のうちに87人が出国している。