第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

3 少年保護対策

(1) 少年の福祉を害する犯罪
 警察では、児童に淫行をさせる行為のように、少年の心身に有害な影響を与え、少年の福祉を害する犯罪(福祉犯)の取締りと被害少年の発見・保護を推進している。

 
図3-33 福祉犯の法令別検挙人員(平成16年)

図3-33 福祉犯の法令別検挙人員(平成16年)
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 特に、児童買春や児童ポルノについては、平成16年7月から、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律が施行され、児童ポルノの提供等が禁じられたことなどを踏まえ、取締りを強化している。

 
表3-35 福祉犯の被害少年の学職別状況(平成15、16年)

表3-35 福祉犯の被害少年の学職別状況(平成15、16年)
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 また、日本国民が国外で犯した児童買春、児童ポルノ事犯等の取締りや国際捜査協力を強化するため、警察庁では、16年11月、東南アジア3か国の捜査関係者、非政府組織(NGO)等を招いて、児童の商業的・性的搾取対策東南アジアセミナーを開催し、各国の児童買春等の状況や取組み等について意見交換を行った。

 
表3-36 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律による検挙状況(平成15、16年)

表3-36 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律による検挙状況(平成15、16年)
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事例
 高校教諭(48)は、15年8月、買春目的で渡航したカンボジア王国内の風俗店で、従業員に代価を支払い、同店で稼働していたベトナム国籍の女子児童(16)と性交した。16年2月、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反で検挙した(千葉)。

 
(2) 有害環境の浄化
 インターネットの普及により、少年が、インターネット上で過激な性や暴力の表現に接することができるようになっていることから、警察では、こうした違法情報・有害情報に少年がアクセスできないようにするため、利用者に対し、フィルタリングシステム(注)の導入を勧めている。


注:ウェブサイト上の違法・有害表現へのアクセスを制御するために、受信者側でこれらの情報を受信するかどうかを選択できるシステム

 また、未成年者が酒類やたばこを容易に入手できないようにするため、これらを未成年者に販売・提供する事業者の指導取締りを徹底するとともに、関係業界による自主的な措置が講じられるよう働き掛けている。平成16年6月に締結されたたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約において、未成年者に対するたばこの販売を禁止するため効果的な措置を実施することとされていることを受け、同月、警察庁は、財務省、厚生労働省と共に、関係業界に対して、たばこ自動販売機の適正な場所への設置や従業員等による適正な管理の徹底等、未成年者の喫煙を防止するための取組みを要請した。

 
(3) 暴力団等の影響の排除
 警察では、暴力団やその周辺者が関与する福祉犯等の取締りを積極的に行うとともに、補導活動や少年事件の取扱いを通じて少年の暴力団等への加入状況の把握に努め、暴力団等からの離脱促進や新たな少年の暴力団等への加入阻止のための対策を推進している。

 
(4) 少年の犯罪被害への対応
 平成16年中の少年が被害者となった刑法犯の認知件数は35万6,426件であり、このうち凶悪犯は1,935件、粗暴犯は2万488件であった。
 警察では、被害少年に対して、継続的にカウンセリングを行うなどの支援を行っている。また、少年補導職員等を増員するとともに、大学の研究者、精神科医、臨床心理士等部外の専門家を被害少年カウンセリングアドバイザーとして委嘱し、支援を担当する職員が専門的な助言を受けることができるようにしている。

 第4節 少年の非行防止と健全育成

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