第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第4節 少年の非行防止と健全育成

1 少年非行の概況

(1) 少年非行情勢
 平成16年中の刑法犯少年(注)の検挙人員は13万4,847人(前年比9,557人減)と、4年ぶりに減少した。また、刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は34.7%(前年比3.3ポイント減)であった。しかし、同年齢層の人口1,000人当たりの刑法犯少年の検挙人員は16.8人(前年比0.7人減)と、戦後最悪であった昭和50年代後半と同程度の水準にある。


注:14歳以上20歳未満の者で、刑法犯で警察に検挙されたもの

 
図3-28 刑法犯少年の検挙人員、人口比の推移(昭和24~平成16年)

図3-28 刑法犯少年の検挙人員、人口比の推移(昭和24~平成16年)
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図3-29 刑法犯少年の包括罪種別検挙状況(平成16年)

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図3-30 刑法犯少年の学職別検挙状況(平成16年)

図3-30 刑法犯少年の学職別検挙状況(平成16年)
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(2) 平成16年中の少年非行の主な特徴
 [1] 凶悪犯・粗暴犯の減少と知能犯の増加
 平成16年中に、凶悪犯で検挙した少年の数は1,584人と、前年より628人(28.4%)減少し、粗暴犯で検挙した少年の数は1万1,439人と、前年より2,917人(20.3%)減少した。一方、知能犯は1,240人と、前年より456人(58.2%)増加した。
 このうち、路上強盗の検挙人員は763人と、前年より464人(37.8%)減少し、ひったくりの検挙人員は1,352人と、前年より605人(30.9%)減少したが、いずれの罪種も、成人を含めた全検挙人員の約6割を少年が占めた。

 
表3-29 凶悪犯少年、粗暴犯少年、知能犯少年の検挙人員の推移(平成7~16年)

表3-29 凶悪犯少年、粗暴犯少年、知能犯少年の検挙人員の推移(平成7~16年)
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 [2] 重大な触法少年事案の発生
 16年中に補導した触法少年(注)は2万191人と、前年より1,348人(6.3%)減少したが、殺人等の重大な事案が相次いで発生した。


注:刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の者(少年法第3条第1項第2号)

 
表3-30 触法少年(刑法)の補導人員の推移(平成7~16年)

表3-30 触法少年(刑法)の補導人員の推移(平成7~16年)
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事例
 16年6月、小学6年生の女児(11)は、小学校において、同級生の女児(12)の首をカッターナイフで切りつけ、殺害した(長崎)。

コラム1 少年法等の一部を改正する法律案
 これまで、触法少年及びぐ犯少年(注1)の事案に対する警察の調査権限が法律で明確に規定されておらず、事実の解明が十分ではないと指摘されていた。第162回国会に提出された少年法等の一部を改正する法律案には、次のような規定が盛り込まれている。
 [1] 警察官による触法少年及びぐ犯少年の事件の調査手続の整備・・・触法少年及びぐ犯少年の事件について、警察官による任意調査の権限を明確化するとともに、触法少年の事件については、警察官に押収、捜索、検証等の強制調査の権限を付与することとする。
 [2] 一定の警察職員による調査手続の整備・・・警察官は、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警察官を除く。)に任意調査をさせることができることとする。
 [3] 事件の送致・・・警察官は、家庭裁判所の審判を相当とする一定の事由に該当する触法少年及び14歳未満のぐ犯少年の事件を、児童相談所長に送致しなければならないこととする。


注1:刑罰法令に該当しないぐ犯事由があって、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある20歳未満の者(少年法第3条第1項第3号)

 
(3) 校内暴力事件、いじめに起因する事件
 平成16年中に警察が取り扱った校内暴力事件は828件(前年比112件増)、いじめに起因する事件は161件(前年比55件増)であった。

 
表3-31 校内暴力事件で検挙・補導した少年の推移(平成7~16年)

表3-31 校内暴力事件で検挙・補導した少年の推移(平成7~16年)
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表3-32 いじめに起因する事件で検挙・補導した少年の推移(平成7~16年)

表3-32 いじめに起因する事件で検挙・補導した少年の推移(平成7~16年)
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(4) 少年の薬物乱用問題
 覚せい剤乱用少年の検挙人員は1,596人を記録した平成9年以降は減少傾向にあり、16年中は388人(前年比136人減)であった。また、16年中にシンナー等の摂取・所持で検挙した少年は2,205人(前年比630人減)であり、これも減少傾向にある。その一方、MDMA等(注2)の合成麻薬事犯で検挙した少年は67人(前年比38人増)と大幅に増加した。


注2:化学名「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(3,4-Methylenedioxymethamphetamine)」の略名。別名「エクスタシー」と呼ばれ、本来は白色粉末であるが、様々な着色がされることが多く、文字や絵柄の刻印が入った錠剤やカプセルの形で密売されている。

 
MDMA
MDMA

 一部の少年は、覚せい剤が減量や眠気覚ましに効果があるなどと、薬物の危険性や有害性について誤った認識をもっている。また、MDMA等の合成麻薬は錠剤型が多く、使用への抵抗感が希薄になりやすい。取締り法令に触れず多幸感や性的快感等の薬理作用が得られる旨の宣伝がされる、いわゆる脱法ドラッグも、少年の薬物乱用の原因に挙げられる。

 
表3-33 覚せい剤事犯による少年の検挙人員の推移(平成7~16年)

表3-33 覚せい剤事犯による少年の検挙人員の推移(平成7~16年)
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表3 -34 シンナー等乱用による少年の検挙人員の推移(平成7~16年)

表3 -34 シンナー等乱用による少年の検挙人員の推移(平成7~16年)
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(5) 不良行為少年の補導
 平成16年中の不良行為少年の補導人員は141万9,085人(前年比9.3%増)と、平成に入って最多となり、過去10年間で2.1倍に増加した。このうち、深夜はいかいで66万9,214人(47.2%)、喫煙で57万5,749人(40.6%)が補導され、両者で全体の9割近くを占めた。

 
図3-31 不良行為による少年の補導人員の推移(平成7~16年)

図3-31 不良行為による少年の補導人員の推移(平成7~16年)
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 第4節 少年の非行防止と健全育成

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