第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 通貨偽造犯罪

(1) 発見状況
 偽造日本銀行券の発見枚数(注)は、平成11年以降急激に増加し、15年は減少したものの、16年中は2万5,858枚と、前年より8,948枚(52.9%)増加した。
 また、16年中の通貨偽造に関する犯罪の検挙件数は92件と、前年より27件(41.5%)増加した。
 年間の発見枚数が1,000枚に満たなかった8年から10年の水準と比べると著しく増加している。16年11月には、高度な偽造防止技術を施した新しい図柄の日本銀行券の発行が開始されたが、その偽造事案も発生している。
 なお、16年中の偽造米国ドル紙幣の発見枚数は340枚と、前年より18枚減少した。


注:届出等により警察が押収した枚数

 
発見された偽造紙幣
発見された偽造紙幣

 
図3-12 偽造日本銀行券の発見枚数の推移(平成7~16年)

図3-12 偽造日本銀行券の発見枚数の推移(平成7~16年)
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(2) 特徴的傾向と対策
 最近の偽造日本銀行券は、対面行使が可能であるほど外観が本物らしいものや、両替機、自動販売機等で行使可能であるものが増加している。これは、一般に販売されるパソコン、スキャナ、プリンタ等の高性能化が進み、精巧な偽造を容易に行えるようになったためと考えられる。
 また、平成16年から17年にかけての年末年始の時期には、混雑に乗じて神社や寺院、その周辺の露店で行使する事案が多く発生した。同様に、タクシーの車内のような真偽を判別しにくい暗がりの中で行使する事案が多く発生した。年末年始に発生した事案は、複数の府県で発見された偽造日本銀行券の特徴が同一である場合が多かったことなどから、同一集団による犯行である可能性が高い。
 警察庁では、関係省庁や日本銀行と連携して、ポスターやウェブサイトで、偽造日本銀行券その他の通貨が行使された事例や偽造通貨を見破る方法を紹介するなどして、国民に注意喚起をしている。
 また、新500円貨の偽造対策については、日本自動販売機工業会に対して、偽造貨の受入れを防止するための識別装置の改良策等の早急な検討を要請している。

 
通貨偽造の防止を求めるポスター
通貨偽造の防止を求めるポスター

事例1
 無職の男(35)は、15年7月ころから16年1月ころにかけて、自宅のパソコン、カラープリンタ等を用いて金額1万円の日本銀行券約250枚を偽造し、近畿地方の2府3県で、タクシー運転手やコンビニエンスストア店員等に対して行使した。16年2月、通貨偽造・同行使罪で逮捕した(大阪)。

事例2
 車検代行業の男(23)は、15年7月から8月にかけて、カラーコピー機等を用いて金額1万円の日本銀行券280枚を偽造し、友人の大学生(21)らと共に関東各地の花火会場等で約170枚を行使した。また、同年9月から10月にかけて、金額5千円の日本銀行券を偽造し、約140枚を行使した。16年3月までに、車検代行業の男を通貨偽造・同行使罪で逮捕するとともに、その友人の大学生ら9人を偽造通貨行使罪で逮捕した(神奈川)。

事例3
 美容師の男(42)は、15年11月ころから16年6月ころにかけて、パソコン、スキャナ等を用いる偽造方法を同僚に教示するなどして共同で金額千円の日本銀行券約2,000枚を偽造し、東京都内の自動販売機で行使した。16年7月までに、同人ら2人を通貨偽造・同行使罪等で、2人を偽造通貨交付罪等で逮捕した(警視庁)。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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