第3節 「世界一安全な国、日本」の復活を目指して 1 今後10年間の日本警察  かつて、我が国の治安は総じて良好に保たれていると評価されていたが、近年、その水準は悪化の一途をたどっている。侵入犯罪・街頭犯罪の急増は、犯罪被害が身近になったことを国民に実感させ、凶悪な少年犯罪の多発は、その土壌となった社会風潮の見直し気運を生じさせている。外国人犯罪の凶悪化・組織化と全国への拡散は、国際化の負の側面が深刻な形で我が国社会に根付きつつあることを知らしめた。  他方、犯罪に対峙(じ)する司法・行政システム全般の容量不足と機能低下が明らかになってきた。第一線警察の業務負担は、刑事司法の精密化や相談業務の増加等とも相まって深刻な状況にあり、刑法犯検挙率は約2割と戦後最低の水準に落ち込んでいる。このように、現下の状況は正に危機的であり、現行警察制度が施行されて50年を迎えた今、警察の真価が改めて問われている。  本特集では、戦後の日本警察を10年ごとに回顧してきたが、最後に、今後10年間に日本警察が進むべき指針として、犯罪対策閣僚会議による取組みを紹介する。将来、この10年間が「失われた10年」と顧みられるか、「V字回復の時代」と評価されるかは、警察の取組み如何にかかっており、その責任は重い。