(3) 旧警察法の問題点  旧警察法は、警察の民主化を図るものとして画期的な意義を有するものであったが、我が国の国情が十分に加味されていない面もあって、施行当初から多くの問題が生じた。  〔1〕 警察組織の細分化による問題  市町村警察制度を採り入れた結果、1,605にも上る自治体警察が置かれ、警察活動の単位が細分化された。このため、集団的又は広域的な犯罪等に対して、効率的かつ的確な対応をすることが困難となった。  〔2〕 経費をめぐる問題  自治体警察の経費は、特に小規模の自治体にとって重い財政負担となった。その一方、国家地方警察の管轄とされた人口5,000人未満の町村では警察経費が全額国費負担となり、均衡も失していた。また、警察機構を二本立てとし、組織も細分化したことで、組織の複雑化と施設、人員等の重複が生じ、不経済で国民に大きな財政負担を強いるものとなった。  〔3〕 事務の性格に関する問題  警察事務は、国家的性格と地方的性格を併有するものであるにもかかわらず、単なる地理的な区分によって、国又は地方のいずれかの性格に偏った組織により分担されることとなった。しかも、それは、首都警察として国家的性格の強い事務を処理する警視庁に対しても、国の関与は全くなく、経費も自治体の負担とされる一方で、国家的性格の弱い事務を処理する村落部の警察が、国の予算によって維持され、地方公共団体の議会の監督が及ばないなど矛盾のある分担であった。  〔4〕 公安委員会制度と政府の治安責任の問題  公安委員会制度は、新しい警察管理方式として高く評価されたが、反面、国家公安委員会の内閣に対する独立性が強かった。そのため、治安に関して内閣が政治責任を十分に果たすことができず、こうした観点からの民主主義の要請に反するとの疑問が呈された。