第7章 公安の維持 

(2) テロへの対処態勢の強化

 最近の厳しいテロ情勢を踏まえ、国内におけるテロ対策に万全を期すため、各種部隊の実戦的な訓練の積み重ね、関係機関との情報交換、装備資機材の充実等により、対処能力の更なる強化を図っている。

 〔1〕 特殊部隊(SAT)、銃器対策部隊の充実強化
 特殊部隊(SAT)は、7都道府県警察(北海道、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡)に設置されており、ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等に出動し、被害者・関係者の安全を確保しつつ、事態を鎮圧して、被疑者を検挙することを主たる任務としている。主な装備としては、ライフル銃、自動小銃、特殊閃(せん)光弾、作戦用ヘリコプター等を保有している。
 銃器対策部隊は、全国の機動隊に設置されており、銃器等を使用した事案への対処や原子力発電所等の重要施設の警戒警備を主たる任務としているほか、重大事案発生時には、SATが到着するまでの第一次的な対応に当たるとともに、到着後は、その支援に当たることを任務としている。主な装備としては、サブマシンガン、ライフル銃、防弾衣、防弾帽、防弾盾、装甲警備車等を保有している。

 
SATの訓練状況

SATの訓練状況

 〔2〕 NBCテロ対応専門部隊の充実強化
 NBCテロ対応専門部隊は、8都道府県警察(北海道、宮城、警視庁、神奈川、愛知、大阪、広島、福岡)に設置されており、NBCテロ(注)が発生した場合に、迅速に現場に臨場して、関係機関と連携を図りながら、原因物質の検知・除去、被害者の避難・誘導等に当たることを任務としている。主な装備としては、NBCテロ対策車、化学防護服、生化学防護服、生物・化学剤検知器等を保有している。


注:N(Nuclear:核)、B(Biological:生物)、C(Chemical:化学)物質を使用したテロをいう。

 〔3〕 国際テロリズム緊急展開班(TRT-2)の設置
 警察庁では、1996年(平成8年)の在ペルー日本国大使公邸占拠事件の教訓を踏まえ、「国際テロ緊急展開チーム(TRT : Terrorism Response Team)」を設置し、国外で邦人や我が国の権益に関係する重大テロ事件が発生した際に、現地治安機関と緊密に連携しつつ、情報収集や人質交渉等の捜査活動支援を行ってきた。
 2002年(14年)10月のインドネシア・バリ島における爆弾テロ事件では、現地治安機関から我が国に対しDNA鑑定等の鑑識活動について支援要請があり、専門家を現地に派遣した。このように、現地治安機関からの支援要請には様々なものがあることを踏まえ、従来の国際テロ緊急展開チームを、現地治安機関に対してより広範囲の支援活動を行う能力を持つ「国際テロリズム緊急展開班(TRT-2:Terrorism Response Team - Tactical Wing for Overseas)」に改組することとした。
 これは、常設の組織ではなく、警察庁及び都道府県警察の外事部門に勤務する職員のほか、爆発物、鑑識等に関する専門的な知識・技能を有する警察職員等をあらかじめ班員として指定しておき、国外で日本国民の生命、身体及び財産並びに日本国の重大な利益を害し、又は害するおそれのあるテロリズムに係る事案等が発生した場合に、警察庁長官が派遣を決定するものである。

 2 国際テロに対する警察の取組み

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