第1章 地域社会との連帯 

2 交番機能の強化のために

(1) 「空き交番」の現状

 近年、様々な要因により、交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」が多数生じており、このような「空き交番」を解消し、交番の機能を強化することが喫緊の課題となっている。

 〔1〕 「空き交番」についての国民の意識

  ア 「空き交番」の実態
 国民意識調査において、この1ヶ月くらいの間に自宅近くの交番・駐在所の前(近く)を通ったことがあるかと質問したところ、1回以上「ある」と答えた者が67.1%であった。

 
図1-10 自宅近くの交番・駐在所の前(近く)を通ったことがあるか

図1-10 自宅近くの交番・駐在所の前(近く)を通ったことがあるか
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 交番・駐在所の前(近く)を1回以上通ったことがあると答えた者に対し、交番・駐在所に警察官が不在だったことがあるかと質問したところ、「不在だったことはない」と答えた者が27.8%、「たまに不在だった」、「ときどき不在だった」、「ほとんど不在だった」、「いつも不在だった」と答えた者が63.0%であった。

 
図1-11 交番・駐在所の前(近く)を通ったとき警察官が不在だった経験

図1-11 交番・駐在所の前(近く)を通ったとき警察官が不在だった経験
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 また、この1年くらいの間に自宅近くの交番・駐在所に行ったことがあるかと質問したところ、1回以上「ある」と答えた者が15.4%、「ない」と答えた者が84.5%であった。

 
図1-12 自宅近くの交番・駐在所に行ったことがあるか

図1-12 自宅近くの交番・駐在所に行ったことがあるか
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 この1年くらいの間に自宅近くの交番・駐在所に1回以上行ったことがあると答えた者に対し、交番・駐在所を訪問したときに警察官が不在だったことがあるかと質問したところ、「不在だったことがある」と答えた者が56.1%、「不在だったことはない」と答えた者が43.9%であり、「不在だったことがある」と答えた者が過半数を占めている。

 
図1-13 交番・駐在所を訪問したときに警察官が不在だった経験

図1-13 交番・駐在所を訪問したときに警察官が不在だった経験
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 これらの結果から、交番・駐在所の前(近く)を通ったり、交番・駐在所を訪問したりするときに、相当の割合で交番・駐在所に警察官が不在である状態を経験していることが分かる。

  イ 「空き交番」解消への要望
 自宅近くの交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいかと質問したところ、「大幅に減らしてほしい」、「もう少し減らしてほしい」と答えた者が64.5%で、「今ぐらいでよい」、「今よりも増えてもよい」と答えた者(13.7%)の4倍以上になっており、自宅近くの交番・駐在所にもっと警察官にいてほしいという要望が強いことが分かる。
 また、警察官が不在になることを「大幅に減らしてほしい」、「もう少し減らしてほしい」と答えた者は、自宅近くにあるのが交番であると答えた者では69.3%、自宅近くにあるのが駐在所であると答えた者では58.5%であり、自宅近くにあるのが交番であると答えた者の方が、警察官が不在になるのを減らしてほしいという要望がより強いことが分かる。

 
図1-14 交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいか

図1-14 交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいか
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 さらに、自宅近くの交番・駐在所に警察官が不在になることを減らしてほしいと答えた者に、警察官が不在になることを減らしてほしい理由を質問したところ、「いざというときに助けを求めに行けない」と答えた者が80.8%と最も多く、次に「警察官が交番・駐在所にいるだけで安心」と答えた者が51.6%、「交番・駐在所周辺で犯罪を抑止することができない」と答えた者が21.2%となっている。

 
図1-15 警察官が不在になることを減らしてほしい理由(複数回答)

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 〔2〕 「空き交番」についての交番の地域警察官の意識

  ア 交番に警察官が不在であることに対する苦情を受けた経験について
 地域警察官意識調査において、交番に警察官が不在であることについて地域住民から苦情を言われたことがあるかと質問したところ、「ある」と答えた者が75.3%であった。

 
図1-16 交番に警察官が不在であることについて地域住民から苦情を言われた経験

図1-16 交番に警察官が不在であることについて地域住民から苦情を言われた経験
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 また、「ある」と答えた者のうち、苦情を言われる頻度が10年前より「増えている」、「やや増えている」と答えた者が77.0%であり、「変わらない」と答えた者(17.2%)、「減っている」、「やや減っている」と答えた者(3.1%)に比べて著しく多かった。

 
図1-17 苦情を言われる頻度が10年前より増えているか

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 この結果から、交番の地域警察官が日々の活動を通じて、地域住民の「空き交番」に関する不満を直接感じていることが分かる。

  イ 今後特に強化したい活動
 交番の地域警察官として、地域の安全を確保するために今後どのような活動を特に強化したいと思うかと質問したところ、「身近な犯罪の検挙」(68.9%)や「パトロール」(65.8%)と答えた者が多く、「交番における警戒」(21.1%)と答えた者に比べて著しく多かった。
 以上のことから、交番の地域警察官が地域住民の「空き交番」に関する不満を感じつつも、地域の安全の確保のためには交番に常駐するよりも交番の外における活動を強化することが重要である、と思っていることがうかがわれる。

 
図1-18 今後どのような活動を特に強化したいと思うか(複数回答)

図1-18 今後どのような活動を特に強化したいと思うか(複数回答)
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 〔3〕 「空き交番」の生じる要因
 交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」が生じる主な要因として、次のようなものが考えられる。

  ア 事件・事故の増加
 過去10年間で、110番通報の受理件数は約1.8倍、刑法犯の認知件数も約1.6倍に増加しているが、これに伴って、交番の地域警察官が交番の外で事件・事故に対応する時間が増加している。

  イ パトロールの強化
 交番の地域警察官は国民の強い要望を受けて、交番の外に出てパトロールを行う時間を確保するよう努めているため、交番に地域警察官が不在となる時間が増加している。
 また、夜間の合同パトロール等を効率的に行うため、一つの交番に近隣の交番の地域警察官を集中配置して活動させる「ブロック運用」を行っているが、このために交番に地域警察官が不在になることがある。

  ウ 交番数の増加
 治安情勢の変化や市街地の拡大等に応じて交番を増設してきたが、一方で、交番の増設に見合った地域警察官の増配置ができない場合も多い。このため、それぞれの交番に必ずしも十分な数の地域警察官が確保されず、不在になることが多い交番が増加している。

 
図1-19 「空き交番」の生じる要因

 交番が6か所ある警察署を例として図示した。A交番やD交番のように地域警察官が1人だけ勤務する交番では、パトロール、事件・事故への対応、ブロック運用による拠点交番への集中配置等により直ちに地域警察官が不在になってしまう。F交番のように2人の地域警察官が勤務する交番でも、1人が事件・事故への対応に従事し、もう1人がパトロールを行うなど、2人が同時に交番の外で活動すれば、地域警察官が不在になってしまう。
図1-19 「空き交番」の生じる要因

 第1節 地域社会と交番・駐在所

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