第1章 地域社会との連帯 

第1章 地域社会との連帯

特集に当たって

 本年の警察白書の特集テーマは、「地域社会との連帯」である。
 最近の刑法犯の認知件数は昭和期の約2倍の水準に達し、街頭犯罪・侵入犯罪や来日外国人犯罪も増加するなど、国民は犯罪被害の不安をより身近に感じるようになっている。他方で、治安悪化の一因に規範意識の低下や住民相互の人間関係の希薄化があり、これらをいかにして改善するかが治安回復の鍵であるとの認識も一般的になりつつある。
 こうしたことから、国民は警察に対し、街頭パトロール等地域社会に密着した活動の強化を一層求める一方、防犯ボランティア団体の結成等により、自らの手で身近な犯罪を抑止しようとする動きも広まっている。
 また、治安の回復には、警察のパトロールや犯罪の取締りだけではなく、警察と関係機関、地域住民が連携した社会全体での取組みが必要であることから、平成15年12月に犯罪対策閣僚会議が策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても、水際対策を始めとした各種犯罪対策のほか、犯罪の生じにくい社会環境の整備と、国民が自らの安全を確保するための活動の支援を進めるべきことが示された。
 警察では、国民と協力して地域の犯罪抑止を図るための施策や、国民が行う防犯活動を支援するための施策を推進することが重要であるとの認識の下、こうした方向性を国民に示し、理解を得たいと考えたことから、この特集テーマを選定したものである。そこで、今回の特集では、全国各地の活動事例の紹介やアンケート結果の分析等により、地域社会の安全をめぐる現状と課題を立体的に描くとともに、それに対処するための新たな施策を提示することとした。
 第1節では、交番・駐在所に関する国民の意識と現場の警察官の意見を紹介しつつ、交番・駐在所に勤務する地域警察官の活動の様子や「空き交番」の解消策、交番機能の強化策等を記述した。
 第2節では、国民が行う防犯活動の支援や国民との様々な連携の実例を示すとともに、防犯ボランティア団体の活動状況と参加者の問題意識を紹介し、その上で、国民の自主的な防犯活動を促進するための新たな施策のあらましを記述した。
 地域の犯罪抑止や防犯活動を進めることは、治安の回復にとどまらず、希薄化した地域社会における連帯の再生にもつながるものである。本特集を通じ、「自らの安全は自ら守る」という意識が国民の間で更に高まり、地域社会における様々な取組みと融合し、豊かで住みよい社会が実現することを願うものである。

 特集に当たって

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