イ 行政対象暴力による資金獲得活動  近年,暴力団等が不正な利益を得る目的で,地方公共団体等の行政機関又はその職員を対象として行う違法又は不当な行為が,一段と顕著にみられるようになっている。  その形態には,  ○行政機関の有する許認可,指導監督,公金支給等の権限を自己又は第三者の有利となるように行使させることを目的とするもの  ○行政機関又はその職員から不当に金品を得ることを目的とするもの がある。  15年1月から2月にかけて,警察庁等において,全国の745地方公共団体等を対象として調査を行った結果,暴力団等から不当な要求行為を受けたことがあるとの回答が30.5%に上り,そのなかで不当な要求行為の形態として多かったのが,物品の購入要求(23.0%),機関紙の購読要求(22.7%),公共工事の受注業者に対する行政指導等の要求(14.6%),許認可等の決定に関する要求(13.8%)であった(図1-24)。これらの要求に何らかの形で応じたとの回答が17.8%となっており,不当要求等に応じた理由として,威圧感を感じたこと,対応に不慣れであったことを理由とするものが多くみられた(図1-25)。これらの要求への対策を講ずる上で警察に要望する事項としては,暴力団等の犯罪の徹底した取締り(83.3%),脅迫等を受けた際の保護(70.3%),対応要領の教示(57.2%)が多かった(図1-26)。 図1-24 不当要求等の内容(地方公共団体等)(複数回答) 図1-25 不当要求等に応じた理由(地方公共団体等)(複数回答) 図1-26 警察への要望(地方公共団体等)(複数回答)  同様に,15年6月,警察庁等において,国の行政機関の地方支分部局等4,179機関を対象として調査を行った結果,暴力団等から不当な要求行為を受けたことがあると回答した機関が28.2%に上り,そのなかで不当な要求行為の形態として多かったのが,物品の購入要求(30.3%),機関誌の購入要求(29.8%)であった(図1-27)。これらの要求に何らかの形で応じたと回答した機関が14.2%となっており,不当要求等に応じた理由として,以前から応じており断るのが困難(54.5%)であったことを理由とするものが多くみられた(図1-28)。これらの要求への対策を講ずる上で警察に要望する事項としては,暴力団等の犯罪の徹底した取締り(82.4%),脅迫等を受けた際の保護(68.9%),暴力団関係企業等に関する情報提供(60.5%)が多かった(図1-29)。 図1-27 不当要求等の内容(国の機関)(複数回答) 図1-28 不当要求等に応じた理由(国の機関)(複数回答) 図1-29 警察への要望(国の機関)(複数回答) 事例1  山口組傘下組織幹部(44)及び町議会議員(51)は,自らが指定する建設業者を,町発注に係る公共工事の入札指名業者にしようと企て,14年5月,町役場周辺を街宣車数台で街宣活動をした上,同役場において町長に対し,「指名しなければ右翼が来て大変なことになる」などと脅迫した。同月,職務強要で2人を検挙した(岡山)。 事例2  15年6月,千葉県,千葉県警察,千葉県弁護士会及び千葉県暴力団追放県民会議の4者により,行政対象暴力の排除に関する協定を締結した。協定の締結により,県警が県に警察官を派遣するなど,警察本部と知事部局等関係機関・団体が協同して,行政対象暴力対策に取り組むための組織を構築した。