第6章 公安の維持 

対日有害活動の現状と警察の対応

(1)北朝鮮による対日諸工作

1)朝鮮総聯(れん)を通じた対日諸工作
 朝鮮総聯は,慶祝行事等の際に政界人や報道関係者等を招待したほか,幹部が地方自治体の首長を訪問して,早期の国交正常化への協力や朝鮮総聯の活動への理解を求めるなどの諸工作を行った。

2)北朝鮮による工作活動
○北朝鮮工作員の検挙
 平成15年2月28日,我が国において活動していた朝鮮労働党統一戦線部工作員である在日朝鮮人の男性(73)を公正証書原本不実記載・同行使,出入国管理及び難民認定法違反(不法在留罪)で書類送検した。
 捜査の結果,同人が,在日拠点責任者として対韓国工作活動に従事していたこと,工作活動に関する北朝鮮本国からの指示・命令は文書形式で,主に,万景峰92号の船長託送で行われていたこと,同船に乗船してきた統一戦線部担当者から,船内で指導を受けることもあったことなどが明らかとなった。

○九州南西海域における工作船事件
 13年12月22日,九州南西海域において発生した工作船事件につき,15年3月,海上保安庁は,乗組員10人を容疑者不詳のまま殺人未遂と漁業法違反(立入検査忌避)で書類送検した。
 本事案に係る船舶については,2002年(14年)9月に行われた日朝首脳会談において,金正日総書記から北朝鮮の特殊部隊が行ったものと思われる旨の発言があったほか,海上保安庁がこれまでに回収した船体その他の証拠物等から総合的に判断した結果,北朝鮮の工作船であると特定された。
 警察は,これまで検挙した事例から,一般的に,工作船の目的は,工作員の潜入・脱出にあるとみている。

 
引き揚げられる工作船(海上保安庁提供)

引き揚げられる工作船(海上保安庁提供)

3)最近の北朝鮮の動向
○核開発をめぐる動向
 北朝鮮は,2002年(14年)10月に米国に対して核開発を継続していることを認めたと報じられたが,その後,核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言し,1994年(6年)の米朝枠組み合意によって凍結されていた核関連施設を再稼働させるなど,我が国を含めた国際社会との間で緊張を高めている。

○日朝国交正常化交渉
 日朝国交正常化交渉は,14年10月29日~30日,マレーシアのクアラルンプールにおいて行われた第12回本会談以降,日本人拉致問題や核開発問題等をめぐって膠着状態に陥っている。さらに,北朝鮮は,15年3月に我が国が行った情報収集衛星の打ち上げについて,「軍事大国化野望の実現の一環」と報道する(朝鮮中央放送)など,様々な事象をとらえて非難を繰り返している。

4)北朝鮮による対日諸工作の今後の見通しと警察の対応
 北朝鮮は,今後とも,時宜をとらえた対日非難を継続するとともに,我が国の各界各層に対して,過去の清算を最優先させた早期の国交正常化への協力要請や,朝鮮総聯の活動に対する理解を求めて,直接又は朝鮮総聯を介した諸工作を活発に展開するものとみられる。
 警察は,北朝鮮をめぐる情勢に引き続き重大な関心を持ちながら,違法事案に対しては厳正な取締りを行うこととしている。

 

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