第1章 組織犯罪との闘い 

イ 薬物の不正取引に深く関わる暴力団等の犯罪組織

 薬物は比較的,隠匿・運搬が容易で,仕入価格と末端価格との差が大きく,莫大な収益を上げられるほか,その依存性から安定した需要があることから,暴力団等の犯罪組織が組織の維持・拡大を図るために,薬物の不正取引に深く関わっている。また,海外の薬物犯罪組織との交渉から密輸入,国内の運搬,小分け,末端密売等,何段階もの工程を結合して,秘密裡(り)に実行する必要があることも,暴力団等が組織力を背景に薬物の不正取引を敢行することの要因となっている。

(ア)暴力団
 我が国では,従来から暴力団が薬物の不正取引の中核的な存在であり,国際的な薬物犯罪組織と結託して,覚せい剤をはじめとする薬物を密輸入し,国内で組織的に密売を行っている。14年中の主な薬物事犯の検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の比率をみると,覚せい剤事犯が40.2%,大麻事犯が21.8%,コカイン事犯が17.5%,ヘロイン事犯が7.5%となっており,薬物事犯の中でも特に覚せい剤事犯に暴力団が深く関与している(図1-51)。
 一方,暴力団犯罪の中でも覚せい剤事犯が多くを占めており,14年中の暴力団構成員及び準構成員の検挙人員に占める覚せい剤事犯の比率は21.9%となっている。

 
図1-51 暴力団構成員及び準構成員による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成5~14年)

図1-51 暴力団構成員及び準構成員による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成5~14年)
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(イ)イラン人薬物密売組織
 来日外国人による薬物事犯の検挙人員の推移は,表1-8のとおりである。イラン人による薬物事犯は,2年に大麻事犯で2人が検挙されて以降,あへん事犯,麻薬及び向精神薬事犯,覚せい剤事犯のすべての薬物事犯の検挙がみられるようになるとともに,急速に首都圏から地方に拡散した。特に,覚せい剤事犯の検挙人員の増加が顕著となっており,その内容も,他の来日外国人による覚せい剤事犯と比べ,営利犯(営利目的所持及び営利目的譲渡をいう。)の占める割合が高くなっている(図1-52)。また,麻薬特例法第5条は,組織的かつ継続的に行われる薬物の不正取引を効果的に取り締まるため,薬物の密輸・密売等を「業とした」者を重く処罰することとしているが,14年中に,同条違反で検挙した43事件のうち,16事件がイラン人によるものであり,イラン人薬物密売組織が薬物の不正取引に深く関わっていることがうかがわれる。

 
表1-8 来日外国人による薬物事犯の検挙人員の推移(平成元~14年)

表1-8 来日外国人による薬物事犯の検挙人員の推移(平成元~14年)
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図1-52 来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員に占める営利犯(平成14年)

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