ア 各種の事業活動へ参入する資金獲得活動
(ア)金融業
中小企業等における資金需要が増大していること,また,いわゆるバブル経済期以後,一部の市民の間に安易に借金をする風潮が生じていることなどを背景として,暴力団員等が貸金業を資金獲得活動の手段とする状況が一層顕著にみられるようになった。これらの貸金業者は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)に定められた都道府県知事等への登録をせずに貸金業を営み,又は出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)に定められた上限金利を大きく上回る金利による貸付けを行うなど,違法な営業活動を行っている。
違法な営業を行う貸金業者の主な手口としては,
1)店舗を置かず,返済の滞った客が契約した携帯電話を営業に使用することにより,客との連絡に使用した携帯電話の番号から自らを特定されないようにして,警察による摘発を逃れて法外な金利で貸付けをする「090金融」
2)複数の貸金業者が債務者の情報を共有しており,一の業者が高利で貸し付けた金の返済期日が近づくと他の貸金業者がその債務者を電話等で勧誘して,返済資金として元利相当額を貸し付け,これを繰り返すことにより借入金額を雪だるま式に膨れ上がらせる「システム金融」
3)代金後払いで貸し手が借り手に金券を売り,意を通じた別業者に当該金券を安く買い取らせる「チケット金融」
等がみられる。
事例1
山口組傘下組織組員(23)らは,平成14年6月下旬から9月下旬の間,広島県の男性ら7人に法定上限金利の約75倍の利息で貸し付け,利息を取り立てた。同組員は,他の組員数人と貸金業を営む多数の店舗を実質的に経営し,それらの店舗の営業活動を統括する「センター」と呼ばれる事務所を複数設置し,顧客の返済期日等の情報を管理していた。15年1月,同組員ら2人を出資法違反で検挙した(警視庁,広島,愛知,福島)。
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事例2
二代目福博会傘下組織副会長(37)らは,13年2月から11月までの間,無登録で貸金業を営み,会社員や主婦等に対して,1回3万から5万円を3日に1割の高金利で貸し付け,利息を取りたてた。即融資を売り文句に携帯電話の番号を書いた看板やチラシで客を誘い,携帯電話で連絡を受けると路上で客と会い融資する手口で,多額の収益を得ていた。14年5月,同副会長ら4人を出資法違反及び貸金業法違反で検挙した(福岡)。
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(イ)産業廃棄物処理業
産業廃棄物処理業においては,処理費用を抑えるために不法投棄等の不適正処理を行えば,多額の収益をあげることができる。また,産業廃棄物は,事業者の経済活動に伴って広く排出されることから,その処理責任を有する事業者を標的にした不当要求を行いやすい。このため,近年,暴力団によるこの分野への介入が著しい。
過去10年間をみると,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)違反による暴力団構成員及び準構成員の検挙件数,検挙人員は,増加傾向にある(図1-23)。
図1-23 廃棄物処理法違反による暴力団構成員及び準構成員の検挙件数並びに検挙人員の推移(平成5~14年)
事例
山口組傘下組織幹部(30)らは,15年3月から4月までの間,20数回にわたり,京都府京田辺市内の山中に,コンクリート片及び木くず等の廃棄物約2,000立方メートル分を不法に投棄するなどした。5月31日までに同幹部ら8人を検挙した(京都)。
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(ウ)建設業
暴力団による公共事業への参入は,以前からみられた形態であるが,バブル経済崩壊により景気が低迷する中で,暴力団は,暴力団関係企業を利用するなどして,建設業への進出を一層強めている。
14年中,暴力団関係企業に係る犯罪の検挙件数は134件で,これらの事件に関与した暴力団関係企業は138社であるが,このうち建設業関係企業は44社と最も多かった。
事例
A地区は,指定暴力団傘下組織が,地縁,血縁を通じて政・官・業に深く介入し,暴力団と建設業,風俗営業等の特定の業界が共存共栄を図るなど,暴力団の汚染が進んでおり,このような業界は,たとえ暴力団の被害に遭っても後難を恐れて被害の申告をしにくい状況であった。
そのため警察は,風俗営業に対する取締りや暴力追放県民総決起大会を開催するなど,被害の申告をしやすい環境作りを推進した。また,同傘下組織の威力を背景にA地区の建設業界に強い影響力を持っていた建設会社への内偵捜査を推進し,同建設会社役員(60)らが,12年9月半ばから10月末までの間,県の公共工事を受注した共同企業体から金を脅し取ろうとした事案において,14年10月,当該建設会社役員ら3人を恐喝未遂で検挙した。この事件を突破口にして,同建設会社役員らを別の恐喝事件でも検挙し,その結果,同建設会社を倒産に追い込み,同傘下組織の資金基盤を弱体化した。
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