第1章 組織犯罪との闘い 

第1章 組織犯罪との闘い

はじめに

 平成14年の刑法犯認知件数は,285万件を超え,7年連続で戦後最多を記録した。その背景の一つに犯罪の組織化の進展が挙げられる。
 また,最近は,高度な組織化のもとに敢行される国際犯罪,我が国の経済に深く浸透した暴力団による巧妙な犯罪の発生等が指摘されている。さらには,国際犯罪組織と暴力団との連携もみられるようになっている。
 組織化を進展させ,時には暴力性を露わにして犯罪を敢行する国際犯罪組織と,広範な情報網と人的ネットワークを持つ暴力団が連携を深めることは,我が国の治安にとって脅威といえるであろう。また,これらの犯罪組織の威力の源泉となる銃器犯罪,その資金源となる薬物犯罪も増加しつつある。
 我が国の組織犯罪の実態を掴み,いかに対応すべきかを検討することが急務となっている。

 この特集では,まず,多角的な方法で,我が国の組織犯罪の実態を明らかにすることを試みた。第1節においては,統計データや検挙事例はもとより,組織犯罪の捜査に携わる第一線の警察官の声,被疑者の声等を収集し,特に組織犯罪及びそれを敢行する組織の変質に焦点をあて,それらの実態を浮かび上がらせることに努めた。

 次いで,今後の組織犯罪との闘いを考える上での参考とすべく,第2節において,これまでの我が国の組織犯罪対策の軌跡を振り返るとともに,第3節において,諸外国における組織犯罪に関する情勢及び対策を概観した。

 最後に,今後の警察の取組みについて記述した。変質する組織犯罪との闘いにおいては,これまでの各種の取組みを充実強化することに加え,新たな視点から対策を樹立し,実行に移すことが求められる。警察の有するリソースを最大限に活用するための工夫や,関係機関とともに考え,講じていく施策も必要であろう。第4節は,そのような観点からとりまとめた。

 組織犯罪は,我が国社会に確実に根を張りつつある。これを食い止め,安全な社会を確立するためには,組織犯罪の実態に関し一層正確な知見を得た上で,その壊滅に向けた対策を早期に樹立・実行することが求められている。

 

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